異世界パワー?


異世界パワー?

 「・・・・・・で、半ば強引にあそこを出てきたワケだけどよ」
蒼が座り込んで言う。
 「ええ、何なんでしょうね、この・・・・・・獣道」
紅もぐったりしている。
 「俺らさー、これからどこにいくんだよ?」
多少余裕のある栄。
 「・・・・・・・・・」
もはや声を出す余裕もなく息を切らしている碧。
四人はがむしゃらに走って、町の外まで一気に走ってきた。
そこにあったのは、人が通った形跡などまるでない景色。
 「ま、当たり前か・・・俺らだって初めて外に出たんだ。他の奴が出入りしてるって話もなかったし」
 「暗黙の了解みたいな雰囲気がありましたからね。誰も外に出ようとは思わなかった、というより、
 外に出られるということ自体を忘れていたのかも知れません」
蒼と紅の会話に、碧が割って入る。
 「ね、これからどうするの?お家とか・・・また帰れる?」
 「ああ、とりあえず一時的に出てきただけのつもりではいるさ。・・・必ず帰る。あの家は、帰ったらきちんと建て直さないとな」
碧の頭を軽く撫でながら、蒼は自分に言い聞かせるように言った。
 「あのー、俺、ちょっと言いたいことがあるんだけど、いい?」
栄が唐突に改まってそう言うと、三人は首をかしげた。栄はそのまま続けていった。
 「さっきのアレ、なんだったんだろ?」
弾くジェスチャーをしながらそう言った栄の言葉に、三人は一様に手をぽんと打って、代表して蒼が言った。
 「ああ、すっかり忘れてた!」
 「おいおい〜、みんな他人事だと思って〜」
栄ががっくりとうなだれた。
 「いいじゃないですか。『異世界パワー』ということで」
紅がさらりと言う。
 「そうそう、いいんじゃない?『異世界パワー』で」
碧も言う。
 「・・・真面目な話、ホントに『異世界パワー』かも知れねえぞ?それ以外に考えられる原因もないわけだしよ」
蒼にまで言われて、栄はへなへなと座り込みながら言った。
 「じゃあ、もう『異世界パワー』でいいです・・・・・・」
その栄の後ろ姿を見て、蒼が行動を起こした。
 「いてっ!!そ、蒼っ!何すんだよいきなり!」
小石が頭に命中して、思わず涙ぐむ栄に、蒼はきょとんとして言った。
 「・・・・・・弾かねえなぁ」
 「何か弾く要因があるのかもしれませんね。飛んでくるものの速さとか・・・」
紅がもっともらしく考える仕草をして言うと、蒼が本格的に構えを取った。
 「よし、目に焼き付けろ!!俺の豪速球を!」
 「ぎゃー!!やめろマジで〜!!そんなもん当たったら俺もう生きていけない!!」
 「あはははははっ」
ぎゃあぎゃあ騒ぐ栄を見て、碧が笑う。紅も楽しそうにその光景を見て、碧と顔を見合わせて、また笑った。



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