ヴィー君と愉快な仲間たち
ヴィー君と愉快な仲間たち
「で、早速聞きたいんだがよ。さっき言ってた『誓約を受け入れた』って、一体なんだ?」
森の奥に歩き出したヴィレについて歩いていた蒼の言葉に、長い漆黒の髪を揺らしながら、ヴィレが答えた。
「外に出ること自体が、我らの誓約を受け入れたことになるのだ。・・・フロウ、もうろくしていなければお前も覚えているはずだな?」
「もうろくとは失礼だね。確か・・・『我らは人を襲わぬ、その代償として我らの住む森の聖地には足を踏み入れるな』だったかな?」
フロウの言葉に、ヴィレが頷いた。
「そうだ。・・・貴様ら、それもフロウの奴に聞いたのではないのか?」
ヴィレがそう言うと、紅が首を振った。
「いいえ、そこまでは」
「ああ、教えていないよ。彼らはもうとっくに、それを覚えている代ではないからねえ」
「・・・まあ今回ばかりは仕方あるまい。何か、あってきたのだろう?」
奥に進むにつれて、日の光が当たらない深い森が、彼らを包み込む。
「ね、ちょっと寒くない?」
碧がぶるっと身震いをした。
「そうか?・・・・・・碧、薄着してくるからだぞ」
蒼が碧の格好を見て、呆れた口調で言った。半袖のポロシャツにハーフパンツでは、寒いだろう。
「だって、僕こんなに暗くてお日さまの光も当たらないところだとは思わなかったんだもん!!」
「困りましたね・・・私も上着は貸せませんしね・・・」
紅がそう言ったのとほぼ同時に、碧の視界は真っ暗になった。
「わ!?・・・・・・ヴィレの?これ」
「・・・ふん」
碧の上に降ってきたのは、ヴィレの黒くて厚手の外套だった。
「ほら、ヴィー君はなんだかんだ言って優しいんだから、ねえ」
フロウの言葉に、ヴィレがまた顔を赤くして怒った。
「ヴィー君と呼ぶな!!」
「あったかーい、ありがとー」
「・・・・・・あ、ああ」
怒りながらも、碧の言葉にきちんと受け答えするあたりは、フロウの言葉を肯定せざるをえないようだった。
「なんかさ、話に聞いてたより怖い人たちじゃないんだな」
「ああ、むしろ、面白い」
栄がそうぽそりとヴィレに聞こえないように言うと、蒼が応え、紅、碧が頷いた。
「大体の話は分かった・・・結論から言って、我ら全員は協力することはできぬ。里を空ければ、
厄介な奴らに乗っ取られてしまうからな。だが・・・客人の要請、無下に断るわけにもいかん。
俺が共に行ってやろう。文句はあるまい」
ふん、と鼻を鳴らしてヴィレがそういうと、フロウがぱちぱちと手を叩いた。
「やあ、話がうまくまとまってよかったじゃないか。ヴィー君はこう見えてこの森一番の腕利きだからね。
ついでに、視力も抜群」
「ヴィー君はやめろと言っているだろう!!・・・まあ、空から毎日地を見下ろしているからな。この辺りの地理も分かる」
「ありがと、ヴィレ!!」
がばっとヴィレに抱きついた碧に、ヴィレが慌てる。
「どわっ!引っ付くな!!」
「早速懐いてますね、碧ってば」
「まあ、碧が懐いてるんだ、悪い奴じゃねえことは確かだな」
紅と蒼がうんうん頷いて、皆が笑った。