いい加減にしてください


いい加減にしてください

 「・・・・・・で?これはなんのマネなんだろうなあ」
辺りに鋭い眼光を飛ばしながら、しかし蒼が明るい調子で言う。
 「うーん・・・一種の嫌がらせかもねえ」
フロウがそれに応えて、弓を構えながらさらりと言った。
 「・・・・・・・・・」
ヴィレはもう狙いを定めて、飛び出していかんばかりである。
 「全く、いい加減にしてくださいよ本当に」
 「がんばれー!」
紅、碧はなるべく目立たない場所に避難。
 「それじゃあ、行っくぜー!」
栄の言葉で飛び出していくのも、もう五回目を数えた。

 「はい終わり」
蒼が言うのと同時にどっ、と重い音がして、巨大な体が倒れる。
先程から襲ってくるのは、虫や獣たちばかりである。
それも普通のサイズではなく、やけに大きい。
 「・・・なあ、普段この辺りはこんなに物騒なのか?」
栄の言葉に、フロウもヴィレも首を振る。
 「いや、普段彼らはこんなに凶暴ではないはずだけれどね。・・・何かあったのか、それとも・・・」
 「見てくれは悪くとも、このような巨大な種族は気性が穏やかだ。むやみに他の者を襲ったり、
 森を壊すような真似はしないはずだが」
小さい者ほど気性が荒く、厄介だとヴィレは言う。
 「うーん・・・・・・じゃあどんなときにこの種族のひとたちは怒るの?」
碧の言葉に、フロウが答えた。
 「そうだねえ、子供を守るためだったり、住みかを守るために・・・」
 「住みか・・・?そうか、奴らの住みかに何かあったのではないか!?」
ヴィレが唐突に言った。
 「今は奴らの繁殖期ではない。とすれば、住みかに何か異変が起こったと考えるのが普通だろう」
 「そうか!じゃあ、その原因をなんとかすれば!!」
 「俺らも進みやすいし、こいつらも快適!!ってことだろ?」
蒼と栄がうきうきと嬉しそうに言った。
 「そうですね・・・住みかとはどこにあるんです?」
紅の言葉に、フロウが答えた。
 「彼らは水場の近くに住んでいるはずだ。そうだね・・・この森の中に、たしか沼地があったかな?」
フロウの問いかけにヴィレが答える。
 「ああ、おそらく歩いた距離からして、もうこの近くだろう」
 「じゃあ、いったんそこに寄り道だね」
碧の言葉に、笑って蒼が言った。
 「ああ、ちゃっちゃと終わらせて先に行かないとな」



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