ひたすら歩けば何かに当たる


ひたすら歩けば何かに当たる

 「よーし、今日こそ町に着きてえからな、急ぐぞ!!」
 「ホントだよね。僕たち、いつまでこうしてるんだろ」
蒼がいつになく熱くなると、碧はぐったりしながら言った。
 「前に進まないことには、どうしようもないからねえ。ほらっ、ヴィー君!なに寝てるんだい、行くよ」
フロウがつま先でいまだ眠りの中にいるヴィレの頭を、ごつっと蹴った。
 「うおっ!・・・・・・貴様、フロウ!俺は朝日が一番嫌いだと言っているだろう!!」
眩しそうに眉をしかめて、ヴィレが怒る。
 「はいはい、いいから支度してくださいね。・・・栄は起きました?」
ぱんぱんと手を叩きながら紅が辺りを見回すと、栄の姿がなかった。
 「どこに行ったんです?」
 「ああ、栄なら・・・」
 「そこ」
フロウと蒼の言葉を頼りに、紅が栄の姿を探すと、片付けたはずの掛布の中心に、それはいた。
 「・・・栄っ!!あなたどこまで寝汚いんです!?さっさと出てください!」
紅の怒号が響いたのは、言うまでもなかった。

 「全く、出発するだけでこれだもんなあ。こりゃ、いつまでたっても着かねえわけだ」
早足で歩きながら、蒼が言う。
 「急ぐ旅ではないですけれど、早く帰ってあの家を建て直したいですからね・・・」
 「うん、それに・・・ね?」
紅と碧が、真剣な顔で言った。
 「ああ、あいつも心配だしな」
栄がそう言って、思い出されるのは、銀色の長い髪。
 「さ、しんみりするのはいいのだけれどね。・・・いつの間にか止まってしまっているよ?」
 「どわあっ!やべえ!行くぞ!」
フロウの指摘に、皆焦って歩き出した。

だんだん近くなってきた建物の群れに、蒼たち一行は目を輝かせた。
 「おおっ、もうここまでくればあと少しで着きそうだぜ!」
 「それでは俺は、これを取るか」
ばちん、と音がして、ヴィレが羽を取り外したのがわかった。
 「それ、どうするの?」
 「・・・布にでもくるんで、荷物として持っていくしかあるまい」
栄が急に元気になって、駆け出した。
 「こうなりゃ一気にいっちまおー!!」
 「あ、こら栄!!お待ちなさい!」
それを追って紅が走り出したのをきっかけに、皆走り出した。

 「た、多少無理はしたが・・・」
 「ああ、着いたね」
ヴィレとフロウが息を少し切らして言った。
 「ヴィレ、いつも飛んでばっかりいるからそうなんだぞ」
栄が冗談交じりに言うが、ヴィレは図星をつかれたように固まった。
 「はいはい、そういう発言は控えて。・・・ただでさえ、私たちは怪しいみたいですから」
突き刺さる視線を感じて、一行はそそくさと細い路地に逃げ込んだ。



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