新しき町への出発
新しき町への出発

宿の女主人に半ば追い出されるようにして宿を出た一行は、買出しをして町の入り口に集まった。
 「・・・結局正体がばれなくても追い出されるんじゃないかよ・・・」
蒼ががっくりと肩を落として言った。
 「でも、次の目的地が決まっただけ、いいじゃない。ね、がんばろー!」
碧が元気よく言えば、皆笑顔を見せた。
そして一晩だけ留まった町に背を向け、歩き出した。

 「次の町はあの町への道のりよりはかなり近いようだ。・・・ただ、そこが奴らの本拠地だとすれば、今まで以上に障害は多いだろう。
 気を引き締めていくことだな」
ヴィレの言葉に、皆息を飲んで真剣な顔をした。
 「いよいよ、栄を狙って来た原因のとこに着くかも知れないんだね」
碧もきゅっと口を引き結んで、硬い表情で言った。
 「・・・俺、あっちに帰る・・・のかな・・・」
いつになく真面目に、寂しそうに栄が呟く。
 「私は面白そうだからついてきたようなものだ。今更何が起きても構いやしないけれどね」
フロウがいつもどおりの柔らかな笑顔と、ひょうひょうとした口調で言った。
 「さ、襲われるのを待つより、こっちからさっさと出向いていって一発ガツンと殴らせてもらうためにも、行きましょうか」
爽やかな笑顔で物騒なことを口にする紅に顔を引きつらせながらも、一行は前を見据え、止まっていた足を進めて歩き出した。

 「はあ〜長かったようで短かったなあ〜・・・もう本拠地?なのか」
栄が頭の後ろで手を組み歩きながら、そう言った。
 「思えば、栄が降って来なけりゃ俺らの家は壊れなかったわけか・・・」
真剣な口調でうんうん頷きながら蒼が言う。
 「こんな長い距離を苦労して歩く必要もなかったよねー」
 「ええ、賠償請求できるんじゃないですか?」
碧と紅が顔を見合わせてにやりと笑う。
 「どえええ、やめてくれよー!」
栄が頭を抱えるのを見て、皆笑った。
 「君たちも苦労しているのだねえ」
フロウが泣き真似をしながら言う。
 「やめろ、似合わん」
ヴィレが寒気を覚えたのか、腕をさすりながら文句をつけた。



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