続・降ってきた異邦人


続・降って来た異邦人

 「・・・じゃあ、栄の話を整理すると。お前がいたところは『日本』っていうところで、言葉はこことそっくりそのままのところなんだな」
 「そして、車や学校のようなものは大体同じだけれど、細かいところ、名字や家屋に違いがあるんですね?」
 「あと、問題はここがどこなのか、イマイチよくわかんないってことなんだよね。「地球」って・・・聞いたことないし・・・」
 「・・・さらにこの世界の住人は栄様の言うところの『町』から外に出ることはありませんが、栄様の世界の住人は、
 はるか遠いところまで行くこともできる・・・ということでしたね」
昨日の大広間から場所を移して、大きな長机がある書斎に五人はいた。
栄の話を聞いていた四人がそれぞれ違う項目を引き継いで一気に言うと、栄が頷いた。
 「ああ、言葉は同じだけど、俺らの家はこんな昔の洋館みたいな感じじゃないんだよな。
そもそもここは地球があるのかどうなのかも分かんないし・・・町から出ないってのも俺らの世界じゃありえない話だな」
そして、立ち上がって言う。
 「で、俺が今着てるこれが学校の制服なんだ。・・・学校のほうで指定している服なんだけど・・・」
 「・・・どうやらそこも違うみたいだな。俺は学校に自分で選んだ服を着て行ってたからな」
くるくると回って見せた栄に、蒼が言った。
 「でも、学校ごとに違うんだ。指定している学校もあれば、してない学校もあるんだよ」
 「へぇ〜・・・!!」
栄がなにかその世界の話をすると、その度に碧が目を輝かせた。
 「・・・そ、そんなにすごいもんじゃないから、そんなに感動されると照れるなあ・・・」
そう言って栄は気まずそうに頭を掻いた。
 「でもあなたの世界は、こちらにつながっている場所とか、そういうものがあるわけではないんでしょう?
 どうしてここに来てしまったんでしょうか・・・」
紅が顎に手を当てて考える仕草をすると、栄が口を開いた。
 「それなんだ。よくわからないんだけどさ、俺は変な奴らに追われてたんだ。身に覚えがないけど怖いから、逃げ回ってた。
 そしたら追い詰められて、捕まっちゃうって思ったんだ。ぎゅっと目を瞑って・・・気がついたら、空中にいたんだよ」
蒼が肩をすくめて言った。
 「そんで、落ちてきたってわけか」
 「あはは・・・だから、不可抗力だって。そもそも俺が助けてーって言ったわけでもないんだ・・・し?」
語尾が不自然に切れる。
 「・・・まさか・・・」
紅の片眉が上がった。
 「うーん、もしかしたら、助けてー神様仏様ーとは、思ったかも・・・?」
場に沈黙が降りた。
そして、瞬時に巻き起こる嵐。
 「・・・って、もしかしたらそのせいかも知れないだろぉがー!?」
 「そんなわけないだろー!?俺が神様や仏様に守られてるっていうのかよ!?」
 「可能性は捨てきれませんよ!その言葉自体、何かの鍵になっていたのかもしれません!ああもう、どうして目を瞑ったんですか!!
 なにかしらの手がかりが見えたかも知れなかったでしょう!」
 「栄、おマヌケ〜!!」
 「あー、碧までそういうこというのかよ!?」
 「・・・何か、些細なことでもいいので思い出せませんか」
白銀の一言で、びたっと栄の動きが止まった。
 「・・・・・・何か、あるのか?」
蒼も不思議そうに尋ねた。
 「・・・光が、見えたような気がするんだ。真っ白で、目を瞑ってても分かるくらいに、眩しい・・・」
 「光・・・・・・」
白銀が思案するように呟いた。
 「後光か?」
 「も、もうそのネタひきずるのはやめよう・・・」
蒼の言葉に栄の顔がひきつり、
 「それでは、その光が謎の力の正体かも知れないわけですか?」
 「多分ね」
紅には肩をすくめてみせた。
再びその場に満ちる沈黙。しかしそれは、先ほどのものとは違った重さがあった。
 「・・・あ〜もう今日はやめだやめ!!俺らだってヒマじゃねえんだ、続きは明日!!いいな!!」
先の見えてこない話に苛立ったのか、蒼が吠えて、その場はお開きになった。



back