気を取り直して出発!
気を取り直して出発!
「うーっし、次こそ当たっててくれよー」
栄たち六人は一度ハズレを引かされた悔しさをバネに、また新しい出発を迎えようとしていた。
「忘れ物ないよね?ここで大事なもの忘れてったら、取りにこれないかもしれないわけだし」
碧がきょろきょろと辺りを見回しながら言った。
「大丈夫でしょう。どうせまた、戻ってくるわけですから」
にこりと笑って紅が言う。
「そうだな。俺ら、負ける気ないもんなあ」
蒼がにやりと笑う。
「好きでついてきたとはいえ、少しばかりしんどいかな?」
「・・・人を巻き込んでおいてよく言うものだな」
フロウとヴィレも相変わらず。
風が吹きぬけていくと同時に、六人は歩き出した。
目指すは東、今度こそ本当に終わりを迎えたいところではある。
しかしやはり、邪魔と言うのはつきものであって。
「・・・こりゃあ、今度こそ本当に、ビンゴみたいだな」
蒼の視線の先には、黒マントたち。皆一様に同じものを着て、背格好まで同じに見えてくるから不思議である。
「そっかあ、ちょっとさみしーけど、俺帰るんだなあ〜」
栄が腕組みをしながらしみじみと言う。
「ふーん、こいつらか。君らの邪魔者は」
「・・・協力すると言った身だ、せいぜい働くとしよう」
フロウとヴィレもそれぞれ反応を見せた。
「一応ダメもとで聞きますけど、あなたたち、何者です?」
「・・・・・・・・・・・」
「答える気どころか、こちらと会話しようという意欲すら感じられませんね」
紅がやれやれというように肩をすくめた。碧は紅の後ろで、服の裾をぎゅっと掴んでいる。
「仕方ない。やっちゃいましょう、そうしましょう」
栄が拍子をつけて言うと、皆頷いた。
「そんじゃま、行きますか」
やる気のない蒼の声で、一斉に動き出した。
「・・・3人っ!」
どっと音がして、一人倒れる。栄の人数コールが響いた。
「まだまだ!5人!」
蒼も声を張り上げる。
「こっちに来る気ですか?・・・容赦しませんよ?」
紅の凍るような視線に一瞬立ち止まった者の後ろから、フロウの白い矢が飛ぶ。
「・・・こいつら、人間ではないな」
ヴィレの言葉に、皆が振り向いた。
「え?・・・どういうことだよっ、ヴィレ!」
「馬鹿者、止まるな!・・・つまり、人間によく形は似ているが、人間ではないということだ」
爪で切り裂きながら、ヴィレが言う。
「後で説明するよ。・・・今は、とにかく働いてくれたまえ!」
フロウが矢を一気に三本射って、鋭く言った。
「はい、終ー了ー。・・・で、フロウ、ヴィレ。こいつらが何だって?」
どさっ、と音をさせて最後の一人を倒し、蒼が言った。
「・・・こやつらは、人間ではない。・・・厳密には違うが、早い話が、人形だ。こやつらの外套に浮かび上がる文様、
どうりで見覚えがあると思ったぞ」
ヴィレが倒れている体を見下ろしながら言う。
「まあ、人形・・・というか。魔力で作られたものなのは確かだがね」
フロウも弓を背負いながら言った。
「よく見ていなさい。・・・このように、落ち葉や草、木など普通のものは、赤い炎をあげて燃えるね?」
フロウが落ちてきた葉をさっとつかんで、術を使って燃やすと、普通によく見る色の炎となった。
「でも、こいつらは遠い昔の秘術にある方法で、理を曲げて作られたものだ。燃やすと・・・」
そう言うと、フロウは倒れて動かない体に、炎を放った。
「炎は、黒い」
その禍々しい炎を見て、四人は息を飲んだ。
「つ、つまり人間じゃないってことはわかった。だがよ・・・なんでそんなこと知ってんだ?」
蒼が慌てて口を開くと、フロウとヴィレはけろっとして言った。
「そりゃあ、長いこと生きてるからねえ」
「お前、何歳になったのだったか」
「私かい?私は18062歳になったねえ」
さらりと言われた数字に、栄が目をむく。
「いっ!?いちまん!?」
「そういう君こそ、何歳だったかな」
「13705。・・・全く、よく数えたものだと思うな、自分でも」
「こ、こっちもかよ・・・」
蒼がぐったりする。どうりで、はるか昔のことまで知っているはずだ。
「とにかく、まあ歳の話はいいとして。・・・どうして私がまだ若い頃の術が今も生きているのか、
どうも引っ掛かるのだよ・・・」
フロウが顎に手を当てて考え込むと、栄が言った。
「まあ、人間じゃない分やりやすい、イコールぶちのめしやすいってことだな!
よーし、俄然やる気が出てきたぜ!」
ぱしんと音をさせて拳を掌に打ち付けると、皆も頷いた。