おかえりなさい


おかえりなさい

 「・・・・・・・・・」
さーっ。
自分たちの血の気が引く音を、四人は聞いた気がした。
紅の目の焦点が、自分たちに合っている気がする。
 「そ、蒼・・・君、以前はどうやって止めていたんだい」
 「いや・・・それがよ、止めてたの俺じゃねえんだよな・・・」
フロウが珍しく余裕を失い、はらはらとした様子で言えば、蒼は申し訳なさそうに頭をかいて答えた。
 「ええーっ!じゃあ、誰が止めてたの!?」
 「し、白銀」
碧もさすがに兄とはいえこの状態の紅は怖いらしく、そわそわしている。
 「マジか?」
 「マジマジ」
ヴィレの言葉に、蒼は何回も頷いた。
 「いない人に助けを求めるわけにもいかないねえ・・・蒼、君が責任を取って行ってきなさい」
フロウがぐいぐいと蒼を押し出す。
 「どえええっ、やめろ!俺はまだ死にたくない!!」
本気の口調で蒼が言うが、その押す力はぐんぐんと増すばかり。ヴィレと碧が加わったためだった。
 「お願い兄さん、行ってきてよう!!」
 「すまんな蒼、しっかりやれよ」
そんな四人に向けて不意に、紅が口を開いた。
 「・・・・・・まだ、暴れ足りない」
さーっ。
本日二度目、折角戻ってきた血の気が、また引いてゆく。
その時、この場にいままで聞こえなかった音が聞こえてきた。
 「・・・? 何だか、車の音に似てるような気がするんだがよ・・・」
蒼が一瞬抵抗を忘れてその音に聞き入ると、後ろの三人も押す手を止めて聞き耳を立てた。
 「だ、だんだん近づいてるよ!」
碧が焦った声を出した。
 「新手か!?」
ヴィレが目を凝らした、その先には。
ばきばきと茂みの背の低い木々をなぎ倒して飛び出してきた、一台の黒い車。
急停車すると、中から人影らしきものが飛び出し、紅の背後についた。
とっ。
首の辺りを手刀で叩いて気絶させると、紅を受け止めた、その人物。
 「・・・皆様、お久しぶりでございますね・・・」
 「しっ・・・白銀っ・・・!!お前・・・!!」
懐かしい、銀の髪。燕尾服に白い手袋。
 「蒼様。紅様も・・・、とてもお元気そうで・・・」
白銀、堂々の復活であった。



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