遅れを取り戻して
遅れを取り戻して
円を描くように座り、明け方の冷たい空気で冷えた体を、火を焚いて温めながら新たに加わった白銀の話を聞こうと、
皆真剣な顔をした。
「・・・お前、いままでどこにいたんだよ・・・俺ら、結構心配したんだぞ!?」
蒼が白銀に詰め寄る。
「申し訳ございません。・・・あの後、私は玄関口までたどり着きましたが、正面の玄関が目前で崩れ落ち、裏から脱出したのです」
「そっか。・・・どうりで、正面で待ってても来ないはずだよな」
ようやく起きた栄が口を開いた。起きぬけで、声ががらがらと掠れている。
「それからほとぼりが冷め、騒ぎが収まるまで近くに潜伏し、車を出して後を追いました」
「・・・・・・」
隣で白銀にくっ付いていた碧は、突然の襲撃で朝起きるのが早かったためか、うとうととしている。
「しかし、よく私たちの後を追えましたね。・・・外は木ばかりで、大変だったでしょう」
首をさすりながら、紅がいう。
「・・・皆様が草木をかきわけて進んだ後がございました。ですから森は簡単に道を追って来ることができましたが、
草原となると、どうにも・・・。しかし町で買い物をしている時に、皆様の噂を聞きましたので」
その噂を頼りに進んできたのだと、白銀は言った。
「そうか・・・じゃあ、今度は俺らの話か。・・・つーか、フロウ、ヴィレ。お前ら自己紹介しな」
蒼の言葉に二人は頷き、白銀が首をかしげた。
「フロウ様に、ヴィレ様でございますか。・・・私のことは・・・ご存知でしょうか」
「ああ、聞いているよ。なにやらすごい人だとは思っていたけれどねえ、無事で良かったよ」
「聞いたぞ。・・・俺も、無事でよかったとは思う。碧のためにもな」
二人の言葉に、白銀は少し微笑んで頷いた。
「・・・ありがとうございます」
「しっかし、ちょうどいい時に来てくれたよ!!紅止めらんなくてさ、どうしようかと思ったぜー!」
蒼がうって変わって明るい調子になって言った。
「ええ、私もようやく見えたと思ったら、紅様があのご様子で。急がなければと思い参上致しました」
白銀も少し笑顔になって、そう答えた。
「ね、ね、白銀さんっ!はい、これ」
碧が何かを差し出した。
「これは・・・」
「うん、僕、ちゃんと大事に持ってたからね」
「・・・はい。それでは、返していただきますね」
赤いリボン。いままで白銀の髪を結わえていた黒いリボンを解き、碧から受け取った赤いリボンを結びなおした。
「お前ら、いつまでその調子なんだよ・・・。もう、いいじゃん。「おとうさん」って呼べば」
栄が呆れたような、それでいて放っておけないといったような声を出した。
「だ、だって・・・急に変えても、照れくさいもん!!」
栄に向かってそう言うなり、碧は駆け出してフロウの後ろに隠れた。
「おっと」
丁度背中にどかっと突っ込まれ、フロウが少しバランスを崩す。
「私も・・・長年慣れ親しんだこの調子ばかりは、どうしようも」
白銀がかすかに苦笑いして、それから皆笑った。