最初からこうしていれば


最初からこうしていれば

一行は白銀の運転する黒い車に乗り込み、再び目的地目指して旅を始めた。
 「おーおー、早い早い!!」
蒼が歓声を上げる。
 「全く、最初からこうしていれば、面倒はなかったんですけどね。もしかしたら、
 三日くらいで帰れていたかもしれませんよ、私たち」
紅が窓を全開にして、風に吹かれながら言った。
 「それはちょっと大げさだけど。・・・確かに、快適〜!!」
栄も喜んでいる。
 「そうだねえ・・・しかし、よくこんな大きな車をここまで運転してきたものだね」
こんな、とは。
 「はい、多少無茶かとも思いましたが、何分荷物が多いもので。・・・それに、結果的にはこれで良かったのですから」
 「しかし、目立つな。・・・ワゴンは」
黒のワゴン車。全員が乗って、さらに荷物も楽々積める。
 「それとも、ヴィレは狭い車に押し込められて長い距離を旅したかったの?」
碧の言葉に、ヴィレが素早く首を横に振った。
 「そうは言っていないだろう」
 「まあでもヴィレはいいよなー。いざとなったら上空を、痛てっ」
蒼が茶化して言うと、本が叩きつけられるべしっという音とともに、ヴィレの怒号が響いた。
 「そのようなことに力を使っていられるか!」
 「はははは・・・」
それを見たフロウが楽しげに笑うと、皆に笑いが伝染していった。

 「蒼様、申し訳ありませんが、足元の荷物から地図を出してください」
運転しているため前を見据えている白銀からそう声がかかって、助手席にいる蒼は足元を見た。
 「ん?・・・地図!?地図あるのか白銀!!」
かすかに頷いたのを見て、ごそごそと荷物を探る。
 「おお〜、地図だ!!・・・うわ、こんな道のり俺ら歩いたわけ〜?」
ばっと地図を広げ、蒼が顔をしかめた。
 「次の場所は・・・ここですね」
蒼の後ろの席から顔を出した紅が、地図上を指差す。
 「一旦止めましょう」
そう白銀が言うのと同時に、車は停止した。
皆くつろいでいた格好からひょこりと顔を出し、蒼たちの様子を窺う。
 「そうだな。・・・俺らがさっきいた町はここ、だろ?それから俺らは東を目指したんだから、こっち・・・ん?」
蒼の疑問符つきの言葉に、フロウが怪訝そうな顔をした。
 「どうしたんだい?」
 「いや・・・町は書いてあるけどよ、その途中に・・・なんか変なもんの絵が書いてある」
その言葉に、碧が立ち上がり、助手席までとことこと歩いてきた。
 「どれのこと?・・・・・・わ、ホントだ!これ・・・町じゃないよね」
 「見せてください。・・・遺跡、のようですが」
地図を覗き込んだ白銀が言った。
「なんだ、遺跡か。・・・・・・ん?何か、手がかりになるかな。俺が帰る方法に関して」
栄が考え込む仕草をして言うと、ヴィレが頷いた。
 「その可能性はある。・・・行ってみる価値はあると思うが」
 「んじゃあ、ちょっとここに寄ってくれるか?」
蒼の言葉に、白銀は頷いた。
 「かしこまりました」



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