やけに真っ暗な


やけに真っ暗な

 「・・・それでは、私はここに残ります」
 「僕も一緒にいるー」
遺跡前に着き、車を見張るために残ると言った白銀について碧も一緒に残ることになり、
蒼たちは五人で遺跡を探索することになった。
 「ああ、わかった。何かあったら逃げてこいよ」
 「兄さん、中だって何があるかわからないんですから・・・」
蒼の少し間違った言葉に、紅が突っ込む。
 「いきなり飛んじゃって急にさよーならーなんてことには・・・ならないといいけど」
栄が不安そうに言う。
 「さてねえ、それは普段の君の行い次第ではないかな」
 「それでは確実に飛ぶではないか」
フロウとヴィレの言葉に、栄がむっとして騒いだ。
 「ほら、行くぞ」
蒼の言葉に、皆騒ぐのをやめ歩き出した。

 「って、すんげー暗いっつーの!!」
栄が思わず叫ぶ。
中に入ってしばらくすると全く日が当たらなくなり、あたりは暗闇に包まれた。
 「おーい、紅、どこだー?」
 「兄さん、左です左」
 「左?」
 「ぶっ!に、兄さんっ!どうして顔をはたくんです!痛いじゃないですか!」
 「いや、見えねえからよ」
紅と蒼のかけあいを見て、フロウが楽しげに笑う。
 「ははは、まあ、こう暗くてはねえ」
 「・・・俺ははっきり見えているがな。・・・フロウ、そこは」
 「うわっ」
ヴィレが何か言いかけると、フロウが軽く悲鳴を上げた。
 「・・・壁だ」
 「・・・・・・言うのが遅いよ、ヴィー君」
ざらざらとした壁の表面に手をつきながら、フロウが言った。
 「じゃあ悪いんだけど、ヴィレ先頭歩いてくれるか?」
紅に軽く叩かれた頭を大げさにさすりながら蒼が言うと、ヴィレはゆっくりと頷いた。
 「ああ、いいだろう」

 「遺跡っつっても何か古代の生物の生き残りとか、亡霊とか出てくるわけじゃないんだな」
 「そんなもの、ほいほい出てきたら困るだろう?」
蒼の言葉に、苦笑しながらフロウが言う。
 「・・・たいまつがあるな。・・・火をつけたらどうだ?」
ヴィレが立ち止まりそう言うと、フロウが前に出た。
 「どこだい?・・・ああ、これか。よっと」
軽い術を発生させ、火を灯す。
 「おお〜前が見える〜!」
壁に掘り込んである文様や、柱に彫ってある気味の悪い顔などのものが火の光に照らされて不気味に見える。
それに栄が興味を覚えて、きょろきょろとあたりを見回した。
 「やっと前が見えましたか。視覚をふさがれると不安になるものなんですね」
ふう、とため息をつきながら、紅が言った。
 「じゃあ、これからもたいまつがあったら火をつけていこうぜ」
蒼の言葉に、フロウとヴィレが頷いた。



back