真実へ
真実へ
「・・・僕はフロウの知り合いだ、と言ったね。けど・・・厳密には知り合いというよりは、戦友だよ」
サリエラは、最初にそう切り出した。
「・・・・・・以前、君たちに「栄の力」について話したことがあったろう?あの時に話した人物は、伝説や伝承なんかじゃない。
・・・サリエラなのだよ。私たちは混沌とし、滅びかけていた薔薇の里を守ろうと、共に戦った」
フロウが滅多に見せない真剣な目をして言った。サリエラが頷く。
「まさか会うとは思わなかったからね、適当にごまかしたのだ。悪かったよ」
その今までにないフロウの様子を見かねて、蒼が口をはさむ。
「いや、その辺はしかたねえってことくらい、わかるさ。お前が考えなしにそういうことをする奴じゃないってのは、
俺たちだってわかってるからよ」
蒼の言葉を聞いて、皆頷いた。
「その時の力がなぜ、栄にあるのか。・・・もうわかったよね?その首飾り。それの力だったんだ。
その首飾りは君たちが目指している町のとある一族の首飾りだ。でも、資質がある者しかその力を発揮できない。
・・・僕は、力の衰えてきたその一族の中で、唯一資質ある者だった」
サリエラは少し微笑んだ顔のままで言った。
「待ってください、気になっていたのですが・・・私たちの家が崩れたことや、栄が力を発揮したことまで、
どうしてあなたは知っているんです?」
紅の言葉に、ヴィレが頷いた。
「そうだな。・・・それに、俺は名乗った覚えはない」
先程名前を呼ばれたのを覚えているのだろう。それも、略称の方を。
「・・・それが、僕の忌々しい力。資質あるものの力だ。僕に情報を運んできてくれたのは、資質あるものにとり憑く呪いだよ」
サリエラはそう言って、右腕の袖を捲り上げた。
「こ、これは・・・」
ヴィレが目を見開く。
「そう、ルガトの民の君なら、知っているよね。・・・この体に巣食っているのは、魔物だよ。・・・命を食らう、恐ろしい者だ。
名前は誰も知らない。だから、「無の魔物」と呼ばれている」
サリエラの腕いっぱいに、奇怪な文様が浮かび上がっていた。黒いその文様は、怪物の顔のようにも見えた。
「僕はこいつに少しずつ命を食われている。けれど、それ以上にこいつが憑いた時点で一気に寿命が跳ね上がる。
・・・僕は永遠にも近い時を、こいつが与える苦しみと一緒に過ごさなければならないんだ。
でもその代わりに、僕は遠い地で起きた出来事を、その場に自分がいたかのように感じ取ることができる」
まるで苦にも思わないようなサリエラの口調に、その場に静寂が訪れた。
「・・・そいつのことは、俺も知っている。たちの悪い魔物だ」
ヴィレがぽつりと言った。
「だから、君たちのことは知っていた。・・・僕があたりを探ると、君たちの情報が真っ先に飛び込んできた。
外に出た人間の存在を感じるのは、あまりに久しぶりで・・・嬉しかった」
サリエラの穏やかな顔が、次に言葉が発せられたときには、真剣な顔になっていた。
「・・・いいかい?君たちをねらっているのは、その一族の長。その首飾りは、『扉』を開くのに必要なんだ」