町の風景、休息、そして決意


町の風景、休息、そして決意

 「おぉ〜!!マンホールがいっぱいだ!」
中に入ると、綺麗に整備された並木道に、マンホールが一定の間隔で並んでいた。
それを見て栄が目を輝かせた。枝分かれしている道の向こうには、楽しげな雰囲気の店が沢山並んでいる。
 「すごいね〜!僕らの町とは比べ物にならないね!」
碧が大はしゃぎできょろきょろとあたりを見回す。淡い色の明かりが町を照らしていた。
 「おいおい、碧〜。迷子にだけはならないでくれよ?」
蒼の言葉もお構いなしに、碧と栄はどんどん進んで行ってしまう。
 「・・・追いましょう。ここではぐれて何かあっては、危険です」
白銀の言葉に残った蒼、紅、フロウ、ヴィレが頷いて、小走りで二人の後を追った。

 「こら、栄、碧!全く何度呼べばあなたたちは大人しくしてくれるんです!?」
やっと二人に追いつくや否や、紅が二人にお説教を始めた。
 「ごめんなさーい」
 「だってさ、あんまり楽しそうだからさぁ」
紅の剣幕に気圧されて、碧と栄が小さくなった。
 「まあまあ、こんな往来の真ん中でお説教はその程度にして、とりあえず宿を探さないかい?」
 「・・・あまり目立つとよくないぞ。ただでさえ俺達は変わっているらしいからな」
ヴィレがちらりと周りに視線を飛ばす。見ない顔の、男ばかり七人もいたのでは、確かに怪しい。
探るような視線があちこちから送られているのを感じて、ヴィレは眉をしかめた。
 「まずいな。どっかお偉いさんにチクられたら、俺らの存在がバレちまう。行こうぜ」
言って、さっさと歩き出した蒼に続いて、皆急いでその場を離れた。

 「ふー、一時はどうなるかと思ったぜ」
 「全くです。特に栄と碧。あなたたちはしっかりしてくださいよ」
蒼がソファに倒れこんで言えば、その隣に立つ紅がさっきからそわそわしている二人に念を押す。
 「はーい」
 「わかったよ・・・」
なんだかんだで素直な二人は、それに頷いた。
 「隣は大丈夫かな・・・あの三人、うまくやってるといいけどな」
クッションに抱きついて呟く蒼の言葉の意味は。

 「やあやあ、なかなか広い部屋じゃないか。よかったねえヴィー君、飛び回ってもよさそうだよ」
 「誰がそんなことをするか!!」
 「・・・・・・・・・」
隣の部屋に割り当てられたのは、フロウ、ヴィレ、白銀であった。フロウとヴィレは相変わらず。
もちろん、白銀もマイペースそのもの。
 「ところで白銀、君はどう思う?」
フロウに急に振られた言葉の意味がとれず、白銀は首を傾げた。
 「・・・それは、どのような意味でございましょうか」
 「蒼たちと離れた今だからこそ君に聞きたいのだがね。・・・もしかしたらこの先、厄介な事になるかもしれないと、
私の種族としての能力が言うのだよ」
フロウの種族としての能力、それはすなわち。
 「・・・・・・未来を視る能力だな」
ヴィレの言葉にフロウが軽く頷いたのを見て、白銀も頷いた。
 「つまり、この先のあなた方の行動のことですか」
 「・・・気付いていたのかい?鋭いね」
白銀の言葉に満足そうな笑みを口元に浮かべ、意味ありげにすうっと目を細めた。
 「・・・・・・ええ。いつかのあなた方の言葉、何故か含みがあるように感じました。考えを巡らせてはおりましたが、
今のあなたの話で確信を持ちました」
 「そうか。ならば話は早いな。・・・止めるなよ。我等は本気だ。最初からな」
 「ああ、もう里を出るときにこの事は多少視えていたのだよ。・・・だからヴィレにもそのことを話したら、意外にも乗ってくれてねえ」
強い意志を映したヴィレの瞳とは裏腹に、何も見えてこないフロウの瞳を見つめて、白銀は言った。
 「はい・・・私にも、覚えのある感情でございます。止めは致しません。そして、私は何も聞きませんでした」
 「・・・ありがとう」
静かに目を伏せたフロウの静かな声に、白銀が微かに頷いた。



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