早速一戦行ってみよう


早速一戦行ってみよう

 「・・・で、私たちが今いるのはこの宿。南が私たちが入ってきた町の入り口だ。問題は・・・ここ」
フロウが長い指で地図上をなぞりながら話を整理する。
七人は蒼たちの部屋に集まり、地図を置いたテーブルを囲んで、作戦会議の真最中だった。
 「うん、かなり・・・でかいな」
栄がフロウの声に答える。地図の中心にあるのは、一際大きな土地を有する、一つの屋敷。
 「町の中心、加えてこれだけ大きな屋敷ともなれば・・・あいつの話の通りなら、一族の長の屋敷ということなのだろうな」
ヴィレの言う「あいつ」とは、もちろんサリエラのことである。それに蒼が頷いて言った。
 「まあ、そうだけどよ。これだけ大きいと、むしろ屋敷ってより城だよな」
 「ええ、そこに何が待っているのか・・・ま、あの黒マントたちだとは思いますけどね」
蒼の言葉を受けて、どこか険のある言葉を吐いているのはやはり紅だった。
 「・・・扉も、ここにあるのでございましょうか・・・」
 「たぶん、ここだろうねえ。まあ見るからに怪しいし、事実・・・」
白銀の誰にともつかない問いにフロウが答え、不自然に言葉を切った。それを不思議に思った碧が首を傾げる。
 「?」
 「問題の黒マント君たちは、こんなところまで来ているしね!」
フロウの言葉と同時に、蒼と栄がカーテンを一気に開き、窓を開け放つ。二階の部屋のはずであるが、
窓の外にさもそれが当然であるかのように立っている、黒い姿。
 「っはははは!俺達ナメんじゃねーっつーの!」
 「俺もばっちり気付いてたもんなー!な、蒼!」
 「・・・ふん、秘術製の人形であることがこちらにわかった途端、早速これか」
ヴィレが外していた黒い羽根を取り付ける。
 「・・・見くびられたものですね、私たちも。これくらいで腰が引けるような、ヤワな神経は持ち合わせていませんよ」
 「・・・・・・・・・大丈夫でございますか」
 「う、うん。びっくりしたけど」
紅、白銀が碧を守るように立つ。
 「さて・・・準備はいいかい、愉快な仲間達?」
弓を構えたフロウの声に、皆が頷く。
ひゅう、と風を切る音と共に矢が放たれるのと同時に、蒼、栄は窓から飛び出した。

 「おーおーおー、よくこんなに集まったなあ!」
蒼が感心ともからかいとも取れる声を発する。細い路地は、黒い装束に埋め尽くされていた。
 「よっ・・・と。まったく、無茶をさせるよねえ。老体に堪えるよ」
冗談まじりに姿を現したのはフロウ。その上には、ヴィレが黒い羽根を揺らめかせて滞空している。
続いて、銀色の影が降りてきた。
 「・・・私も協力致します」
すると上から声がかかる。
 「白銀。駄目じゃないですか、置いていったら」
 「えへへー。これで皆一緒だね!」
同時に、碧を抱えた紅が現れる。
 「本当は、あなたの役目でしょう?」
にこりと笑みを見せる紅に、白銀が微かに苦笑した。
 「・・・申し訳ございません」
 「じゃ、元気に行ってみようー!これ終わったら、飯な!」
栄の声に、皆頷いて。
戦闘開始。



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