突破可能?


突破可能?

 「っだー!!イライラする!!なんなんだよー!!」
栄が力任せに数体の人形を吹っ飛ばす。
 「・・・栄様、どうかご辛抱を・・・」
そういう白銀の表情も、だんだんと硬くなってきている。
 「おいおい、やべぇんじゃねえの?俺ら、さっきからよ・・・幾らも進んでねえって、の!」
言いながら襲撃をかわす蒼も少し息切れしていた。
 「さすが本拠地、とでも言って欲しいんでしょうかね・・・。全く、建物が見えているのに着かないなんて」
碧を後ろに庇いながら、紅が愚痴を零す。
 「住人は皆昏倒、味方は無し。見渡せど敵ばかり・・・ね。ふふふ、笑うしかないねえヴィー君」
遂に矢が切れたため大弓で敵をなぎ倒しながら、フロウが笑う。
 「ヴィー君はやめろ。緊張感が無くなるから笑うな」
フロウの言葉にいちいち真面目に返しながら、ヴィレが飛んだ。
辺りを見回していた白銀が、軽くため息をついて蒼に呼びかけた。
 「蒼様。・・・非常手段です。この町の方には申し訳ないのですが、中を通らせていただけば、多少は」
 「多少は・・・マシか?・・・・・・仕方ねえ、そうするか!」
白銀の提案に頷くや否や、蒼は手近な家の扉を開けた。
そしてそのまま屋内に駆け込んだ。
 「ちょっと、兄さん!!私たちを置いて行く気ですか!?追いかけますよ、碧」
 「うんっ」
紅がぎょっとして叫びながらも、碧の手を引いて続く。
 「やれやれ、仕方ないねえ。失礼するよ」
フロウもさっと中に入る。
 「おいっ、待てってー!!俺、身動き取れないって・・・」
 「馬鹿者、行くぞ」
囲まれた栄をヴィレが上から引っ張り救出した。
 「・・・失礼致します」
申し訳なさそうに囁いて、白銀も最後に続く。
扉を閉めると、先頭を行く蒼が裏口を開けた音がした。
 「突破成功ー!!」
勝ち誇った蒼の叫びが、静かな町に木霊した。



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