走る走る

 「回り込まれる前に走れ!皆頑張れよー!!」
先頭を風のように、蒼が走る。
 「に、兄さん・・・足だけは速いんですから、加減して下さい・・・っ」
息を切らしながらも紅が前を行く蒼に注意した。
 「こらーっ!!蒼!!置いていくなー!!」
地面に降ろしてもらった栄が、後ろから紅に並びつつ叫ぶ。
 「・・・疲れるね・・・!!ヴィー君、ずるいんじゃないのかい?」
 「・・・・・・悔しかったら羽でも付けるんだな」
大弓を携え走り辛そうなフロウの隣をヴィレが悠々と滑空している。
 「碧、大丈夫ですか・・・?」
 「うん、大丈夫!!ありがと、白銀さん!」
一番後ろを走る碧の隣を、心配そうに白銀が付き添った。
目指すは正面、一際大きな建物。
心なしか、その上の空の色がほんのりと赤いような気がする。
 「うまいこと大通りに出たみたいだな!このまま一直線!!」
更に速度を上げる蒼に、栄が叫んだ。
 「置いてくなってばー!!」

後ろからはまた黒い人形達が迫ってきている。
それを確認して栄がまた前に向かって叫んだ。
 「おーい、蒼!!どうやって中に入る気だよー!?」
眼前の城の様な建物の扉は、どう見たってぴったりと閉まっている。
段々鮮明に見えてくると共に絶望的なその状況に、紅が首を振った。
 「全く、ここまで来て、それはないでしょう・・・?」
そこへヴィレがすいっと空を奔り蒼に追いつくと言った。
 「・・・俺が見てこよう。お前たちは走れ」
言うか言わないかでさっと蒼を追い越し、ヴィレが扉へ辿り着く。
ヴィレが扉の前に降り立つと、扉は音も無く開いた。
 「・・・自動ドアかよ!?」
栄が思わずツッコミを入れる。
 「とりあえず、問題は解決じゃないか。よかったねえ」
にこにこしながらフロウが言うと、皆頷いて扉の中へなだれ込んだ。



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