何だかおかしい奴ら


何だかおかしい奴ら

 「う〜・・・・・・」
 「どうしました?早くしてくださいよ」
 「栄、あと五秒ね!!」
 「よし・・・これだっ!!・・・あああっ!!?」
 「さ、次は私の番ですね。・・・はい、上がり」
 「ちくしょうっ!!もう一回!!」
何をやっているかと言えば、トランプを使ってババ抜きをしているのである。
最後に残った紅と栄の一騎打ちが繰り広げられたが、勝者は紅。
 「・・・・・・栄様、表情を変えすぎです。ですからすぐに分かってしまうのです」
 「あっ、白銀!!教えたらだめだろ!」
 「大丈夫ですよ兄さん、栄は原因が分かったところで直せる人じゃないですから」
とっくに上がっていた白銀と蒼、そして最後の最後に勝った紅が栄に三者三様の対応をする。
 「紅兄さんはわざと最後まで残っていじめてくるから、気をつけたほうがいいよ」
 「気をつけようがないだろ〜・・・そんなの・・・」
白銀、蒼の次に上がった碧が、落ち込んだ栄の肩をぽんと叩いて慰めた。
栄は、外に出られない状態になっている。外の風景を見てみたかったと言ってふてくされた栄を、
遊んであげるからと言って碧がなだめ、皆でババ抜きをすることになったのだ。
実年齢はどうあれ、精神年齢は碧の方がよっぽど上のようだ。
 「それにしても、こういう遊びまで同じだと、異世界だっていうこと忘れそうだな。・・・まあ、トランプの絵柄は違うみたいだけどさ」
 「そうなんですか?そちらのトランプはどんなものなんです?」
紅が珍しく栄の世界の話に興味を示したのが嬉しかったのか、栄が一気に笑顔になる。
 「俺らの方は赤と黒のカードで、十一と十二と十三のカードに、絵柄がついてるんだ。こっちはフチに綺麗な模様がついてて、
 青と緑のカードはすごく綺麗だと思う。全部に絵柄がついてるのもかっこいいよなあ・・・」
しかもキラキラしてるし、と言って改めてトランプを眺め始めた栄に、紅が苦笑した。
 「見慣れた私たちにとっては、そんなにすごいものだとも思えませんけどね」
 「なんだったら、一つ持っていくか?俺はもう使わないしさ」
蒼の言葉に栄が目を輝かせる。
 「いいのか?だったら是非もらいたいんだけど・・・」
 「やめておいた方がいいですよ。兄さんのはきっともうボロボロですから、私のを持って行きなさいな」
 「ひどいぞ、紅!!」
辛辣な紅の言葉に、蒼が大げさなリアクションをする。
和やかな雰囲気に、皆が笑った。
そこに窓の外をするりと通った、黒い影。
 「・・・何者です!」
白銀が鋭くその方向を睨みつけ言ったのとほぼ同時に、がさりと音がして、何かが逃げたのを皆が感じ取った。
 「・・・逃げられました。追いますか」
白銀が詰めた息を吐きながら言うと、蒼はゆるく首を振った。
 「いいさ。やらせておけばいい」
 「え、でも、栄がさ・・・」
碧がちらりと栄に視線をやりながら言うと、栄は笑った。
 「大丈夫だろ。少なくとも、ババ抜きしてる最中にこなかったんだから、何もする気はなかったと思うけど?」
 「何だかおかしい奴らだが、人の楽しみを邪魔しない程度の常識は持ってるってことか?」
蒼の言葉に、また楽しげな雰囲気が戻って、皆で笑った。



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