突破!
突破!
「兄さん、僕、ついていけない〜・・・」
息を切らしながら、碧が訴える。
「頑張ってくれよ碧〜。俺らだって、なあ?紅」
「ええ、みんな疲れてますけど。もう少しだけですから、ね?」
蒼も紅も、碧を励ましながらも速度を緩めない。
蒼たち五人は、長い廊下を玄関目指してひた走っていた。
「でえっ、前からも来た!!」
急に止まった蒼の肩に、栄がぶつかった。
「ぶっ!!な、何だよ、止まるならそう言えって!!」
「わりぃ。・・・でもな、それどころじゃねえもんでさ・・・」
前方をにらみつけたまま、蒼が言う。
襲ってきた者たちとの、均衡状態。それは、とても間抜けな形で破られることになる。
「・・・っくしゅん!」
「こら、碧!!」
紅も予想外の事態に面食らったようだった。
「ごめんなさーい。でも、ムズムズしたんだもん」
そのくしゃみをきっかけにして飛び出したのは、栄だった。
「先手必勝!!」
まず一人、飛蹴りを食らわせて昏倒させると、二人目も蹴り飛ばす。くるくると動いて、まるで曲芸を見ているかのようである。
次に飛び出したのは白銀だった。
「援護します」
栄の後ろに回りこんだ者に、綺麗に背負い投げを決めた。
三人いた者たちは、あっという間に片付いた。
「おうおう。やるじゃん」
蒼が口笛を吹いた。
「へへへ、俺、柔道も空手もケンカも得意ですから」
鼻を人差し指でこすり、得意げに栄が言う。
「まさに万能タイプですね。頭以外」
「あ、ひどいぞ紅!!」
皆が笑う中、服の汚れを払いながら白銀一人が厳しい顔をしていた。
「あまり時間がありません。急ぎましょう」
その時、何か甲高い音が空気を震わせた。
まだ意識のあった一人が、救援を呼んだようであった。
「こいつ!!」
栄が振り向くが、救援は呼ばれた後。すぐにバタバタと沢山の足音が聞こえてきた。
「全く・・・碧の教育上よろしくないじゃないですか」
碧を庇うように立つ紅がため息をつく。
「暴力的シーンを含みますので、ってやつだな」
栄がおどけた調子で言う。
「さてさて、一仕事と行きますか」
蒼が腕をブンブン回した。
「走りましょう。どこかではち合うことになりますが、少しでも出口に近づかなければ」
白銀の言葉に、皆頷いて走り出した。
「おじさんたち、さよーなら」
碧の行儀の良い挨拶がその場に響いた。