小休止・みんなで大掃除!


みんなで大掃除!

 「よーし、皆、得物は持ったか!」
 「おー!!」
 「・・・・・・・・・」
よく晴れた日、五人は玄関口に集まっていた。ノリノリの四人と、一人落ち着いている白銀。
 「こんなに広いからな、使えるもんは何でも使うぞ!!というわけで、栄もバリバリ働けよ!!」
 「了〜解!!」
蒼の言葉に、おどけて栄が敬礼してみせた。
そう、得物、とは。
 「じゃあ、俺は庭を掃いて草刈りをするから、紅と栄は家の中を徹底的に拭き掃除してきてくれ。碧と白銀は中を掃き掃除な!」
蒼は竹ぼうきと草刈り鎌、紅と栄は雑巾とバケツ。碧と白銀は室内用の自在ぼうきを持っていた。
「じゃあ、掃除開始だ!!日暮れまでには綺麗にしたいからちゃきちゃき働けよ!!」
蒼の言葉で皆、自分の担当場所に散って行った。
残った蒼も、それを満足げに眺めてから庭の掃除に取りかかった。

こちら、紅・栄班。
 「紅、俺ここ届かないんだけど」
 「ああ、待ってください。こっちが終わったらやりますから、違うところをやっててください」
 「はいはいっと」
順調に掃除し始めて、数十分が経った。紅は、ある事実に気付きつつあった。
 「紅ー、俺こっちも届かないんだけどー」
 「・・・・・・・・・栄、低いところを掃除してもいいんですからね・・・?」
 「・・・・・・・・・・・・・・・え?」
訪れた沈黙。
 「だ、だって、紅が棚ばっかりやってるからさ、俺、棚やったほうがいいのかと思って・・・」
 「わ、私のせいですか!?あなたが私より背が低いのを考慮しての行動だったんですよ!!」
こうなると思って、と紅が言った。
 「あ、そ、そうか!!ゴメンな!」
 「・・・いいえ、こちらこそ」
奇妙な沈黙の後、紅は棚、栄は低いテーブルや床を拭き始めた。

こちら、碧・白銀班。
 「白銀さん、こっちの部屋終わったよー」
 「・・・ご苦労様でした。私も今こちらが終わりました」
にっこり笑う碧につられるようにして、白銀も微かに笑う。
 「少し休憩いたしましょうか。いいものを差し上げますよ」
 「えっ?いいもの?」
そう言うと、白銀はわくわくと聞き返してくる碧に笑みを見せて、食堂の方向へ歩き出した。
その後を、白銀の腰ぐらいの背しかない碧が、とことことついて歩く。
端から見れば、ちょうどカルガモの親子のようだったろう。食堂について、白銀は調理場の上の高い棚から何かを取り出した。
 「・・・これです。一つしかありませんから、お兄様たちには内緒ですよ」
そう言って碧の目線に合わせるように屈みこみ、綺麗な包みをひとつ碧の手に乗せふっと笑って、真っ白な手袋の人差し指を唇に当てた。
 「・・・うんっ」
その動きを真似て自分も人差し指を唇に当てながら、碧は嬉しそうに笑った。

 「・・・ふう、だいぶ片付いたな」
日もだいぶ傾き、土まみれになった蒼が独り言を呟くころには、中を掃除していた四人もほぼ同時に出てきた。
 「兄さん、こっちは大体終わりましたよ」
 「いやあ〜疲れた疲れた。ホントに広いな、ここは」
 「こちらも終わりました」
 「うん、綺麗になったよ!」
 「そっか。よし、じゃあこの辺で終わりにするか!!皆、ご苦労さん!」
始まり同様、蒼の言葉で館の大掃除は終了した。
が、蒼は後日妙なことに気付く。
 「紅、あのさ・・・」
 「なんです、またですか?・・・今度は何を?」
栄は、高いところにあるものを必ず紅に取ってもらっている。
 「へへっ」
 「・・・・・・・・・」
碧と白銀は、時々目線を合わせ、顔を見合わせ、笑っている。
 「もしかして、俺・・・孤立してる?」
はあ、とため息をつく蒼は、一人紅茶をすすりながらその奇妙な光景を数日の間拝むことになる。



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