小休止・悪夢
悪夢
栄はその日、なかなか寝付けないでいた。
「・・・白銀が変なこというからだよなあ・・・全く・・・」
『どんな目に遭うかもわからない』発言のことだろう。
「ちょっと、怖くなっちゃったんだよなあ・・・」
静かな空間すら恐怖の対象なのか、ぶつぶつと言わなくてもいいことまで声を出す。
「まあ、大丈夫大丈夫!!さーて寝ようっと」
自分を勇気付けるように大きな声で言って、栄はがばっとふかふかの毛布を被った。
「・・・・・・なんだ?ここは」
真っ暗な空間。自分以外には何もいそうもないような、漆黒の闇。
と、そこに、はるか遠くから人の足音が聞こえてきた。
「・・・・・・なんだか・・・気味が悪いな・・・って、近づいてる近づいてる!!しかも超早いし!!」
栄がツッコミを入れている間もその足音はカツカツカツカツと、規則正しく近づいてくる。
一人のものではない。大勢のもののようだ。
「さあ、一緒に来てもらいますよ」
カッと靴を鳴らして現れたその正体は、黒服の男を後ろにたくさん従えた、白銀だった。
「ぎゃー!!白銀!!?何すんだ!!俺をどうする気だ!」
捕まる人お決まりの台詞を吐いて抵抗するが、黒服の男たちはびくともしない。
「もちろんあなたが一番いやな事をして差し上げます。さあ、皆さんいきますよ!」
「うわあああっ!!アレだけはいやだあああ!!」
ばたばた抵抗する栄を、ふはははははっと高笑いする白銀率いる黒服の男たちが担いでいった。
「ぎゃああああっ!!納豆・・・納豆だけはやめてくれ〜っ!!・・・あれ?」
爽やかな朝。小鳥がさえずり、カーテンの隙間から日が差し込む。今日もいい天気だ。
対するは、全く爽やかではない上に、謎の絶叫とともに起床の栄。
「・・・・・・いかがいたしました?」
横で心配そうな顔をして栄の様子を窺っているのは、白銀。
「どわあっ!白銀!!」
ずざざざ、と音を立ててベッドの端に退く栄を見て、白銀が微かに不思議そうな顔をした。
「私がなにかいたしましたか?」
その声は静かで、とても高笑いなどしなさそうな、安心する声だった。
「いや、うん、あの・・・怖い夢を見たんだ!・・・・・・うう、怖かった〜〜!!」
ずざざざ、と音をさせて今度は白銀に擦り寄る。軽い衝撃を白銀が受け止める。
「・・・それは、災難でしたね。もう大丈夫ですよ」
碧や、小さい頃は蒼や紅にもしていたのだろう。慣れた感じで、背中を軽く撫でて落ち着かせる。
「そうだよな・・・白銀が無理矢理俺に納豆を食べさせるなんて、ありえない話だよな・・・」
ぽそっと安心しきったように呟くと、白銀はまた不思議そうな顔をした。
「?」