小休止・薔薇の里恋物語
薔薇の里恋物語
「はあ・・・素敵・・・っ」
薔薇の里にフロウに連れられた蒼たちが来てからというもの、その一行の姿を木陰から目で追っている人物の姿があった。
彼女の名はシーラ。年齢を明かすことは出来ないが、とりあえず独身である。
「ああ、この想いをどうやって伝えたら・・・」
ぶつぶつ、夢みる瞳のまま呟いている。
「でもいけないわ、相手は人間だし・・・ああもう本当に」
「ちょっとあなた」
「何よもううるさ・・・っきゃあああああっ!?」
ぶつぶつ呟き続けるシーラに、声をかけた人物がいた。
「何なんです?この間からずっと私たちの様子を窺って」
「紅兄さん、この人?」
紅と碧だった。どうやら紅は、ここ数日のシーラの視線に気づいていたらしい。
「え、あ、ええと・・・あ!あなたたち・・・あの方と一緒にいた人たちよね!?」
「あのかた?」
突然ばっと身を乗り出したシーラに驚いてのけぞりつつも、碧が聞き返す。
「そう、あの・・・赤い髪のお方よ!!名前は知らないのだけれど・・・素敵っ!」
「って、ええええっ!?蒼兄さんのこと!?」
「に、兄さんですか?」
碧が目をまん丸にし、紅が呆れた声を出す。
「そう・・・?蒼様って言うのね〜!ああ、何て素敵な響き!!」
シーラはシーラで、碧が『蒼兄さん』と言ったのを逃さず聞いて、ひとり盛り上がっている。
「うそでしょ・・・僕、兄さんを友達として以上に好きになった人って初めて見た」
「ええ、本当に・・・必ずと言っていいほど『お友達としては』最高ねと言われる人ですからね・・・」
一人で赤くなったり夢みがちな瞳になったりするシーラを、碧と紅が呆然と眺める。
「ねえ、あなたたち!蒼様の弟なら、私に協力してくれないかしら?」
夢の世界から帰還して、シーラが唐突に言う。
「え〜!?」
「何故私たちが・・・」
それを聞いた紅と碧は、露骨にいやそうな顔をした。