小休止・薔薇の里恋物語 2
薔薇の里恋物語・2
「で、蒼様は何が好きなの?」
「・・・・・・食べられるものなら大体なんでも食べますよ」
「じゃあ、好きな女性のタイプとかって・・・」
「・・・僕、知らないもん」
それからのシーラの質問攻めに、紅と碧はうんざりしていた。
紅が不意に口を開く。
「・・・あなた、兄さんのどこがいいんです?私が言うのもなんですが、今まで彼女なんかいたこともないくらい、モテない人ですよ?」
「ちょっと、今私が質問してるのに・・・」
不満げな様子のシーラに、頬杖をついた紅がため息をもらす。
「もういいでしょう。今度はこっちの質問に答えてくださいよ」
「そうね・・・一目惚れ、かしら・・・」
「っええええっ!?」
今度こそ、前回の比ではないくらい、紅も碧も同時に驚いた。
「う、嘘でしょ〜っ!一目惚れされる、のは紅兄さんの専売特許だったじゃない!」
「え、ええ、自分で言うのは恥ずかしいですがそうですね・・・。まさか、兄さんが・・・」
ひそひそと驚きを囁きあう紅と碧などまるでいないかのようにトリップし、シーラワールドが展開する。
「そうよ、あのつややかな赤い髪!整った顔立ち!もうどこをとっても完璧だわー!!」
「ちょっと、ちょっとシーラさん。戻って来て下さい」
紅が呆れた顔で現実にシーラを引き戻す。
「兄さんの一体どこを見たんだろうね・・・」
とりあえず、首から上を見たことだけは、確かなのだが。
「・・・というわけなのよ。ああ、この燃えるような想いをどうしたら・・・!!」
また夢の世界に旅立ちかけるシーラを押さえて、紅が言う。
「シーラさん、落ち着いて。・・・そんなにもどかしいなら、兄さんに言えばいいじゃないですか」
「!!」
びた、と動きを止めたシーラに、碧がたたみかける。
「そうそう。僕たち、兄さんをさりげなく呼んで来てあげるー」
「だっ、ダメ!!ダメよそんなの!!恥ずかしいわ!!」
きゃー、と言って両手で顔を覆うシーラに、紅がさらに言った。
「・・・・・・物陰からじーっと様子を窺っているほうが、恥ずかしいと思いますけどね・・・」
「・・・ですから、日が沈みかけた頃、私たちがあの木の下に行くように仕向けますから・・・」
「ちょ、ちょっと待って。沈んでからではいけないの?明るいと恥ずかしいわ・・・」
「だーめ。蒼兄さん、寝るの早いもん」
真っ白なテーブルが影になり灰色に染まるくらい、ぐっと身を乗り出して相談する三人。
愛の告白大作戦、決行は、善は急げと本日夕暮れ。
「そう・・・健康的な生活・・・素敵ね!ああ、なんて・・・」
「はい、ストップ。・・・いちいち旅立たないで下さい。進まないでしょう」
「う、ご、ごめんなさい」
「で、シーラさんは兄さんがくる少し前にはそこにいてね。・・・トリップしちゃだめだよ」
碧の言葉に、ゆっくりとシーラは頷いた。
「それでは、決行は今日の夕暮れ!いいですね?」
「ええ!」
紅がぱん、と手を叩いてまとめると、シーラも碧も頷いた。