小休止・月と太陽の闘争


月と太陽の闘争

 「貴様!!俺の外套を勝手に毛布代わりにするな!!」
 「なんだい、人がいい気分で日光に当たっている時に。いいじゃないか、このままだと腹が冷えるのだよ」
頭の下で腕を組み寝転がった格好のままで、フロウが相変わらず青筋が元気いっぱいなヴィレにひょうひょうと言う。
 「・・・・・・また始まったみてえだけどー?」
蒼が今まで寝ていた頭を振りながらそう言うと、本を顔にかぶせたまま寝てしまっていた紅が、
もぞもぞと動き出して言った。
 「放っておきなさいな。どうせまた・・・」
その隣ですうすうと寝息を立てて寝ていた碧も目を覚ました。
 「・・・・・・フロウの勝ち?」
栄はこの騒ぎの中にあっても全く起きる気配を見せなかった。
日光はさんさんと降り注ぎ、陽気ないい天気である。少しの休憩の間、皆昼寝をしていた。
ただ一人を除いて。
 「俺が光を嫌っているのを知っててやっているだろう!!返せ!!」
 「嫌だねえ、ひがみっぽいと嫌われるよ?ヴィー君、友達いないだろう」
 「ヴィー君はやめろと何回言えばわかるのだ!!」
この二人、かなり大声でやりとりしている。
フロウが日当たり抜群の位置に陣取っているため、日陰にいるヴィレと距離があるためである。
 「いいかい?君は月の眷属だから分からないだろうが、私は太陽の眷属だ。日光に当たれるときに当たって、
 英気を養わないと。君は日光を避けていればやり過ごせるだろうが、私はそうはいかないのだからね」
夜は強い光がないのだからと、フロウは言う。
 「俺とて好きでこう言っているわけではない!!今日は、雲ひとつない晴天だぞ!?いくら俺でも、力を削られる!
 大体貴様、燃費が悪すぎだ!!」
確かに空を見上げれば、眩しい太陽のほかには、空の色しか見当たらない。
 「いいじゃないか。少しは静かになったほうが、皆の安眠のためにもなるしねえ」
 「戦力にならねば意味はないわ!!」
 「それじゃあ、おやすみー」
さらりさらりとヴィレの言葉をかわすフロウに、青筋を立てて怒るヴィレ。
この二人の大声でのやり取りが巨大な虫たちを呼び寄せ、のちに足止めをくらう原因になるとは、
思ってもみないことであった。



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