しらこたその3


「小太郎っ!!助けて〜!!」
「何だよ、白迅・・・またおせんべい無くなったの?ちょっと食べすぎ・・・」
「違うって!もうちょっとまともな内容だよ!!いいから、早く〜!うわああ〜食べられる〜!!」
ばたばたと階下が騒がしい。
「・・・食べられるって・・・何・・・。あんな図体でかいの食べれるのなんていないよ・・・」
小太郎はため息をついてしぶしぶ階段を下りる。
「!! うわっ!!」
「うわあっ危ない〜!」
飛び出してきた白迅を避けきれず、まともに正面からぶつかる。
「・・・ててて・・・大丈夫?小太郎・・・」
「・・・・・・大丈夫・・・だけど、重い・・・」
「うわー、失礼な。仕方ないでしょ、僕の方が身長あるんだもーん」
そして白迅が飛び出してきた部屋からゆったりと歩いてくる影。
「ぎゃー!!助けて小太郎〜!!」
白迅はその気配を敏感に感じ取り飛び起きると、小太郎を盾にしてしゃがみこんだ。
「・・・って、猫じゃないか!わあ、可愛い・・・!!」
「か、可愛いくないよ〜!!僕、ネコはイヤ〜っ」
何でコレがココにいるの〜、と喚く白迅には構わず、小太郎はその猫を抱き上げる。
「まだ子猫みたいだな。・・・って、どうしたの白迅」
「そいつ・・・何でかわかんないけど僕を追い回すんだもんっ。僕、食べられるかと思ったよ!!」
小太郎の背にしがみついて猫を威嚇する白迅に、小太郎はため息をついた。
「お前を食べれる大きさじゃないだろ、この猫!何やってるんだよ、情けないなあ」
こんなに可愛いのに、と呟いて、小太郎は猫を撫でる。
「むう〜・・・このネコめ・・・小太郎に取り入りやがって・・・」
ぶつぶつ呟く白迅の目の前に、小太郎は猫を差し出す。
「うわー!!何すんのー!!小太郎っ!僕イヤだって言ったじゃん〜!!」
ぎゃあぎゃあ喚いて逃れようとする白迅に、小太郎は意地悪く笑う。
「こんなに可愛いのになあー。・・・白迅、僕・・・そんな情けない白迅よりだったらこの猫の方が好きだからねっ」
「そ、そんなー!!酷い酷いっ!!」
「まあまあ、まず触ってみなよ。すっごくふわふわで可愛いから」
僕が猫押さえてるから、という小太郎を、白迅は恨めしそうに見つめた。
「覚えてなよ・・・小太郎〜」
それから恐る恐る手を伸ばすが、猫がにゃあと鳴くたびに手を引っ込める。
「うう・・・こいつ〜・・・絶対僕をおちょくってるよ、小太郎っ」
「おちょくられるなよ・・・猫に」
はあっとため息をつく小太郎を見て、白迅が覚悟を決めたようにきゅっと口を引き結ぶ。
「ようし・・・お前には小太郎を渡さないぞ、ネコ!!」
「・・・というよりさ・・・勝手に猫に僕を奪われるなよ」
早く、という小太郎に頷いて、白迅は猫に手を伸ばした。
ふわりとした毛の感触を感じたかと思うと、さっと手を引っ込める。
「さ、触った!!ね、見た〜!?触ったよ僕!!」
「うん、見た見た。えらいえらい」
にこりと笑った小太郎に、白迅も笑顔になる。
「いや〜、僕もやれば出来るっていうか、なんていうか。惚れ直した?小太郎っ」
「さ、僕この猫外に放してくるね」
「ちょっとー!!小太郎!?」
猫を抱いたままさっと立ち上がり玄関に向かう小太郎を、慌てて白迅は追いかける。
「ちょっと、待ってってばー!」
喚きながら追いかけて、靴を履こうとする小太郎に追いつく。
呼びかけて振り向かせると、さっとその唇を奪った。
「えっへへ、ご褒美いただきー!!」
「〜〜〜っこの、バカ!」
すぐさま踵を返して室内に逃げ込んだ白迅に、小太郎は真っ赤な顔で叫ぶ。
腕の中の猫が、迷惑そうに一声鳴いた。






ぬるいどころか・・・まあ、いいや。(何)