しらこた


雨が降る
上を見上げれば、ひらひら
桜色の雨
キミと、


「小太郎ー!」
ばたばたと足音が響く。
「何、どうしたの、白迅」
その足音が近づいてくる方向を正確に察し、振り返る。
「ん、いや〜、今日は何かあったかいからさ〜。外、行かないかと思って」
にこっと笑うその顔に、小太郎は苦笑した。
「もう…僕、一応宿題やってるんだけど」
言いながらも立ち上がる小太郎に、白迅は更に笑みを深くする。
「ごめんごめん。ちょっとでいいんだよ〜。さっ、行こう!」
小太郎の手をさっと取り駆け出した白迅に、小太郎は戸惑いながらもついていった。

「ここって…公園じゃないか」
白迅に手を引かれたどり着いた場所は、近所の公園。
まだ雪こそ降らないが、寒さは冬のそれと変わらないほどだ。
「うん。公園だよ〜。いいじゃん。あんまり遠くまで行くわけにはいかないでしょ〜?」
「まあ、そうなんだけど…何で?」
首をかしげる小太郎に、白迅はいつものように笑う。
「ん〜…一緒に来たかったんだよ、ここにね」
「一緒に…?」
頭ひとつ以上も高い白迅の顔を、小太郎は見上げた。
風が吹いて白迅の髪を揺らし、その表情をうかがい知ることはできない。
二人の間を、朱や黄に染まった落葉が通り過ぎていく。
「…うん」
空を見上げ、白迅は更に言う。
「今は…落ち葉だけど。いつか、キミと一緒に…」
ためらうように口を閉ざし、小太郎を見つめる。
「一度でもいいんだ。キミと一緒に、桜の花が見たい。満開の」
切なげな瞳が、次の瞬間には笑みの形を描く。
「桜…って」
きょとんと目を丸くしてから、小太郎は、ふっと笑った。
「…バカだな。なら、見ればいいだろ。一緒に、何回でも」
「え?あ…うん。そう、だね。そうだね…」
違う答えを予想していたのか、一瞬驚いた表情になった白迅だが、すぐに笑みを浮かべた。
手を伸ばせば、触れられる距離。
伸ばしかけて引いた手を、一回り小さな手が捉えた。
「…変なところで遠慮するよね、白迅って」
苦笑する見上げた瞳に、つられるように苦笑して。
今度こそ伸ばした手は、頬に触れ、
唇が触れるまで、あと少し。

桜色の雨
キミと一緒に見に行こう
何度でも、一緒に






えーと。たまには、おとなしめな白迅…(笑)