しらこた


「小太ーっ!!今日、休みだったよね!!一日中ゴロゴロできるんだねー!!」
「何が一日中ゴロゴロだよ!!僕は宿題があるんだから、あっち行っててよ白迅」
しっしっ、と犬でも追い払うように手を振られるが、白迅は全く気にしていない様子である。
「宿題?・・・小太、それ国語じゃん。僕がいたほうがいいんじゃないのー?僕古典得意だからー」
「いいの!!自分でやらないと、全然身につかないんだから。僕、古典のところ結構ヤバいんだからね」
言いながらノートを広げる小太郎の背中を見ながら、白迅は面白くなさそうに頬杖をついた。
「いーもん、僕一人でゴロゴロしちゃうもんねー。小太郎が宿題やってる後ろでのーんびりゴロゴロしてるからねー」
「・・・・・・ああもう!分かったよ、どうしてそう僕の宿題の邪魔ばっかするんだよ!!先週もだろ!?」
文句を言いながらもどかっと白迅の目の前に座る小太郎に、白迅は満足そうに笑って言った。
「だって僕、小太郎大好きだもん。構ってほしいんだもん〜」
頬杖をついたまま、真っ直ぐな笑顔で言われ、小太郎はうっと言葉に詰まる。
これまでも白迅が「大好き」「好き」と言ってきたことはある。
しかしそれに小太郎が何か返したことは一度もない。
「なんだかんだ言って、僕のワガママ聞いてくれちゃったりするトコなんか、もーホント大好き」
にこにこと笑う白迅に、顔を背けて呟いた。
「恥ずかしい奴・・・」
すると白迅はきょとんとして、それからまた笑った。
「それ、褒められたことにしとく」
にこっと笑う白迅の顔に、軽くクッションを投げて小太郎は立ち上がった。
「麦茶取ってくる!!・・・白迅、せんべい食べる?」
「あ、食べるー!!いってらっしゃーい」
慌しく部屋を出た小太郎に向けて、白迅は呟いた。
「・・・本気で好きなのにな・・・。どーもこの茶化すクセだけは、どうにもならないなあ・・・」

「お待たせー・・・って、白迅?」
しばらくして小太郎が麦茶とコップとせんべいの袋を四苦八苦しながら持ってきたとき、
白迅はどうやら待っている間にうたた寝してしまったようだった。
ベッドにもたれかかって眠る姿に、小太郎は苦笑した。
「全く、疲れてるならはしゃがなきゃいいのに・・・」
静かに持ってきたものを置いて、正面に座る。
「・・・しばらく、寝かせといてやるかな」
ふっと笑って小太郎がそう言って麦茶をコップに注いだとき、声がかかった。
「・・・もー、ダメじゃん。そこで小太が『愛してる』って言ってくれたら、僕がすかさず飛び起きる算段だったのに」
「しっ、白迅!!起きてたの!?寝たフリしてたのか!!」
思わず後ずさった小太郎に、ぱちっと目を開けて白迅が言った。
「全く、小太は空気が読めないったら。フツーはここでそうなるでしょ?」
「・・・読めなくて悪かったな!!僕は『愛してる』なんて絶対言わないし!!」
せっかく持った麦茶の入ったコップを置いて、小太郎が言うと、白迅は急に真剣な顔になった。
「・・・・・・本当に?僕は・・・こんなに小太郎が好きなのにね」
「白迅・・・?」
「僕は小太郎が好きで好きで・・・どうにかなりそうだよ・・・っ」
絞り出すように言った白迅の声は切なく響き、小太郎は目を見開いた。
「白迅・・・」
「どうして分かってもらえなかったのかな・・・。僕はあんなにキモチを伝えてたのに」
「僕は・・・」
真剣な瞳に真っ直ぐ見据えられ、小太郎は耐え切れず俯いた。
「僕は・・・白迅のこと、どう思ってるかなんて、分からない、よ・・・」
嘘をついた。
本当は、分かっていた。
はっきりと口に出来ないのは、自分の性格が邪魔をするから。
「・・・でも・・・嫌いじゃ、ないよ」
「小太郎。・・・素直じゃないのは、口だけみたいなんだけど」
少し無理をしているような白迅の笑顔。それでも、笑っている方が好きだと小太郎は思った。
「うるさいよ。どうせ、顔真っ赤だって言うんだろ。知ってるよ、それくらい」
それから、手近にあったもうひとつのクッションを、少し強めに顔めがけて投げる。
「わわっ!」
それをすれすれで掴んだ白迅に素早く近づいて、頬に触れるだけの口付け。
言葉にするのが白迅のカタチなら。
「・・・それ、僕の気持ち!」
言って階下に走って逃げた小太郎をきょとんとした顔で見送って、それから白迅は笑い出した。
「はは、あははははっ!!確かに、『愛してる』とは、言ってないね!!
やるなあ小太郎!!・・・これが、キミの愛?」






白迅は至近で投げられたクッションを掴むよ!!