からこたその3


「・・・あ、あの・・・」
「・・・・・・・・・」
小太郎は硬直していた。
首を傾ける事はおろか、指の一本さえ動かすことが出来ない。
何故そんな状況に陥ったかと言えば。
すべては、このひとの所為。
「・・・小太郎。今暫く、このまま・・・」
「か、唐紅さん・・・っ」
後ろから優しく抱きすくめる、このひとの。

ようやく解放された小太郎は、真っ直ぐに唐紅に向き直った。
「・・・あの、・・・どうしたんですか?」
急にあんな行動を取るなんて、唐紅らしくない。
そう思った小太郎は、正面から唐紅を見つめて、心配そうな瞳で下から様子を窺った。
「・・・・・・古くから親しかった神の、消滅に立ち会った」
暫くして唐紅が口を開き、常に無く力ない口調で呟いたのは、そんな言葉。
普段、感情を強く顕わにすることのない唐紅の様子に、小太郎ははらはらと頭ひとつ以上も高い唐紅の瞳を見つめた。
やがてそんな小太郎を下から覗き込むように、唐紅が膝をついた。
「お前は確かに生きていると、この身で確かめたかった・・・驚かせたか」
白く滑らかな、しかし力強く大きな手が、小太郎の左頬に触れた。
「・・・唐紅さんの手は、冷たいですね」
「お前の頬は、温かい」
それから、するりとその手を頭に回し、小太郎をそっと胸に引き寄せた。
唐紅の腕の中にすっぽりと入った小太郎は、その背におずおずと腕を回す。
「知ってますか、手が冷たいひとは、心が優しいって」
「・・・それは、知らなかった」
頭のすぐ上に、常の調子を取り戻した、低く凛とした声を聞いて、小太郎は思わず小さく笑いを漏らした。
するとすぐに頭をくしゃくしゃと優しく撫でられ、小太郎は腕にぎゅっと力を込めた。
「僕は、大丈夫です。いなくなったりしない。だって、・・・唐紅さんが、守ってくれるんでしょう?」
少し照れくさかったが思い切って言うと、珍しく、空気を微かに震わせる気配がした。
「・・・ああ」
腕を緩めて、顔を合わせる。
見上げる小太郎の唇に落ちてきたのは、優しい口付けひとつ。






は ず か し い ってこの人・・・!!(お前だろ)