からやた


「オイラ唐紅好きだぞ!!」
「・・・そうか」
鎮守の森、自分の社のすぐ近く。
一本の楓の木の下のひとに、元気に叫ぶ。
しかし言われた当人は冷静そのもの。
「・・・ん?伝わらなかったか・・・?じゃあどう言えばいいんだ?」
首を捻っているうちに、隣をすっと通り過ぎ姿を消した人物。
唐紅に気持ちを伝えるべく突撃した八魂は、見事に玉砕・・・だったのかさえ、わからない状態だった。


「かーらーくーれーなーいー!!見つけた!!」
「八魂・・・何用だ・・・朝から我のところに来たかと思えば・・・あのような」
散々町中を探し回って、結局八魂が唐紅を見つけたのは、自分の社の裏の木の下。
勝手に探しておいて軽く怒りながら、八魂は唐紅にずいと詰め寄る。
「我は眠りたかったのだ・・・・・・我を探していたのか、八魂」
「そうだぞ!!もーっ、こんなとこにいるとは思わなかった!!」
朝の件を確かめようと、息を吸い込む。
「だから、オイラは唐紅が好きなの!!聞いてんのかっ、唐紅!」
「ああ・・・聞いている・・・わかった」
頷かれたが、八魂はまだもやもやとした気持ちのまま。
どうしてなのか、何なのかわからないまま、暫く時が流れる。
「・・・・・・八魂の言うそれは・・・何なのだ」
それから、唐紅が相変わらず木の下に座ったまま、口を開いた。
「ん?だから、好きだってば」
言いながら目の前に勢いよくすとんと座り込む八魂に、唐紅は寝起きのだるさに大きく息をつく。
「・・・我をどう見ている。意味合いが、それぞれ違うであろう?」
言われ、八魂は首を傾げる。それから、にこりと笑って口を開いた。
「抱きついたり、手つないだり、したい!!」
そのどうとも取れる答えに、唐紅はふうっと息をまた一つついた。
「わからぬ。・・・・・・それは・・・」
言いかけて、八魂の着物の袖をぐっと引く。
当然引き寄せられる八魂の、その唇に、柔らかな感触。
「・・・このような意味か。それとも、違うのか」
ほんの少し、前に出ればまた唇が触れてしまうような距離のまま、唐紅が口の端を上げる。
その、答えを誘うように首を少し傾けた、至近での笑みに八魂の顔がみるみる赤くなる。
「え・・・っ?・・・と・・・」
「・・・答えは、楓にて・・・・・・いつか」
言って、そのまますっと姿を消した唐紅に、八魂は悔しそうに叫んだ。
「・・・不意打ちなんてずるいじゃないかーっ!!」
そういう意味の好きだと明日の朝伝えに行こう、と八魂は決心して、社に戻る。
それから、少し思い出して、顔を赤く染めた。
「もやもやしたの・・・ちゃんと伝わったかわかんなかったからだ」
でも、きちんと伝わっていた、とわかった今はすっきりとした気分だと一人笑い、八魂は眠りについた。






からやた初挑戦〜(ばたり)八魂は「突撃受け」(新ジャンルか)。