やかこた


「〜〜〜っのアホフクロウ!」
「っせえバカウサギ!!」
「もー!またなの、二人とも!!いい加減にしろ!!」
怒る白迅、こめかみに青筋が浮いている夜狩、間に立って叫ぶ小太郎。
またこの気の合うやら合わないやらわからない二人が言い合いになったため、小太郎は仲裁に立った。
暫くにらみ合った後、全く同じ動きでふんっとそっぽを向き合った二人は、全く別の方向に歩き出した。
「え?え?・・・ちょっと、二人とも!!」
小太郎が呼びかけても、双方止まらない。
どちらを宥めに行こうか、と考えた結果、小太郎は放っておいてもそのうち帰ってくるであろう白迅ではなく、
最近様子がおかしく心配な夜狩の方へ行くことにし、駆け出した。

「・・・夜狩っ!待ってよ、夜狩!!」
「・・・・・・小太郎。何だよ・・・いや、悪かったな」
最初は夜狩の機嫌が悪く小太郎も身を固くしたが、
すぐに夜狩がため息と共に空気を柔らかくしたため、ほっとして近くに寄った。
「いや、それはいいんだけど・・・大丈夫?色々」
最近調子が悪いみたいだ、と小太郎が言うと、夜狩は苦笑した。
「ああ・・・お前にもわかるくらい、あからさまか?俺は・・・」
何でもねえよ、と口では言うが、その瞳は常の強い光を失くしている。
「・・・夜狩?本当、大丈夫?」
「ん・・・いや、ちょっとな・・・病気、かもな」
天を仰ぎながら言った夜狩の表情は、小太郎には見えない。
「え!?病気!?・・・どうしよう、だって、夜狩神様なのに・・・」
病院には行けないよね、と考え込む小太郎に、夜狩は笑った。
「ああ、そういうのは意味ねえんだ。・・・まあ、しばらくは治らねえな・・・もしかしたら、一生治らねえかも」
「ど、どういう・・・それって、神様だからってこと?」
戸惑いでいっぱいの小太郎の瞳が見上げてくる。
それに夜狩はますます説明に困って苦笑してしまう。
「人も神も関係ねえさ。こればっかりはな・・・まあ、何だ」
ふっと言葉を切る夜狩に、小太郎が首を傾げる。
一瞬後には、頬を柔らかな感触が掠めた。
風が吹く。
「・・・こういう病気」
にやり、いつもの笑みを浮かべる。
背後にはいつの間に上ったのか、月。
満月には満たず、ほんの少しだけ欠けた月。
「え・・・?」
「・・・俺の場合は、治る・・・かもな?」
月の光に照らされた頬がどんな色をしていたのか、知るのは一羽の梟のみ。






恋の病だよーあーはははは(恥ずかしさ故に壊)