しろさか文1
「白銀ー…っと、何やってるんだ?」
ばたばたと走ってきた栄は、上着を脱いで作業している白銀を見て足を止めた。
「…栄様。今日は、少し甘いものをと思いまして」
白銀が作業していたのは、生クリームの撹拌。
「おお〜!すごいな白銀、何でも作れるじゃん!まさか甘味まで作れるとは思わなかったぜ〜!」
「いえ…」
また撹拌を始めた白銀を、栄は近くにあった椅子に座ってじっと見つめる。
「……? 何か、ご用だったのではないのですか?」
手を止めて振り返る白銀に、栄はにかっと笑った。
「ん、いやー…暇だから話でもしたいなーと思ったんだけど、コレ見てるのも面白いからさ」
それを聞いて、白銀はまたボウルへ向き直り、かしゃかしゃと混ぜ始める。
「お話でしたら…私よりも、蒼様やフロウ様の方がよろしいと思われますが…」
「え?あ、…そっか。全然思いつかなかったな。俺はさ、お前がいいから」
そう言ってまたにっと笑う顔を見てか見ずか、白銀は何も言わない。
砂糖を加え、また混ぜるとそれから手を離し、籠の中にある何かを探し始めた様子だった。
「………」
それを黙って見ていた栄は、椅子に座ったまま椅子ごと移動して、調理台の前まで来た。
「…お!甘−い!!」
生クリームを味見して、思わず顔が綻ぶ。
「栄様…」
気づいた白銀は僅かに苦笑するものの、咎めはしない。
「…いかがでございますか」
「ん、美味いよ。ちょうどいい感じで」
にこりと笑って言うと、白銀もつられるように微笑した。
「味見してないのか?なら、ちょっと味見してみればいいのに」
甘くてうまいよ、と栄が言うと、白銀は思案するように僅かに首を傾げていたが、やがてふっと笑った。
「…では、そう致しましょう」
すっと手を伸ばし、栄の顎を捉えると、そのまま口付ける。
「……っ!?」
「…少し、甘すぎたかも知れません」
唇が離れると、そう言ってまた微笑む。
「…っし…白銀〜〜っ!?」
真っ赤になって栄が叫んだ。
「……これが出来上がりましたら、ゆっくりする時間も出来ましょう」
「え?あ…!うん、それまで、見ててもいいよな?」
「はい。構いません」
話がしたいと言ったのを覚えていて、さりげなく伝えてくれるのが嬉しくて。
栄はまた、にこりと笑った。