しろさか5
「…でさ、その時蒼が…」
昼下がり。
薄く日の光が差し込む部屋で、二人並んで座る。
「…っでもう、おかしくてさ…」
「……」
栄の明瞭な声が響く。
その隣の白銀は、静かではあるが時々頷きながら微笑むのを見ると、話を聞いているのがわかる。
ずっと話している栄も、それがわかるからつい嬉しくて、次々に話を繋ぐ。
「ってわけなんだ」
「…それでは、後始末が相当大変でしたでしょう」
「うん、そうだったんだよなあー。俺もう、どうしようかと思ってさ」
困ったように笑う栄を、眩しそうに見つめ柔らかに目を細める。
「で、またその後の話なんだけど、」
再び話始めた栄を、また静かに白銀が見つめる。
「はい」
「その騒ぎの後に、また蒼がさ…」
終始笑顔で話す栄の顔を、落ち着いた色を湛えた白銀の瞳が見つめる。
時折ふと微笑む顔を見ると、栄は顔に熱が集まるのを感じながらも、もっと話したいと懸命に口を動かすのだが。
「懲りずにまた花瓶を投げ…っ痛」
「…いかがなさいました?」
急に辛そうに顔をしかめた栄に、白銀が手を添える。
「〜〜〜舌、噛ん…っ」
口元を押さえたまま呻いて動くことも出来ない栄の手を、白銀がやんわりと避ける。
「お見せください、口を開いて…」
素直に口を開いた栄に薄く微笑むと、中を覗きこむ。
「…少しではありますが、血が」
「……っやっぱり…?」
言葉少なになった栄の頬に、そっと白銀が手を添えた。
「しろ…っ?」
そのまま口付ける。
「…っ」
唇が離れると、僅かに涙を滲ませた栄の瞳とかち合う。
「…まだ、痛みますか?」
そのままふわりと微笑むと、
「……もう平気っ」
少し拗ねたように尖らせた唇から想像通りの答えが返って、白銀はまた微笑んだ。