番外編壱・3


「ここって、静かですね。日和さん、ずっと一人でいて寂しくなかったですか?」
二人で神社の境内に座り、日差しを浴びる。
日和の隣に座る小太郎が尋ねると、日和はきょとんとした顔をした。
「・・・? 考えたこともありませんでしたね・・・。それに、姿こそ見えなくとも、夜狩が共にいますから」
それから、またふわりと笑顔になって、日和は言った。
「しかし、今よりは・・・小太郎たちがいない分、寂しかったかも知れません」
「じゃあ、僕たちがいれば寂しくないですね、日和さん」
にこっと笑って小太郎が言うと、日和も笑って頷いた。
「ええ、とても楽しいですね」
それから真剣な顔になって日和はさらに続けた。
「・・・思うのです。もしも『力』の持ち主が、あなたではなかったら・・・」
「・・・・・・・・・」
「おそらく、私も、夜狩も。白迅の言うことに耳を貸さなかったでしょうね」
意外な台詞に、小太郎が目を丸くする。
「どうしてですか?」
「・・・いえ、白迅の持ってくることというのは、毎回面倒ばかりで。騒ぎの中心にはいつも白迅、といった具合で。
私たちも飽き飽きしていたということです」
にこりと笑って言われると、小太郎も笑うしかない。
「は、ははは・・・そうなんですか?」
「でも、あなたがとても綺麗な気を纏っていたから、手伝う気になったのですよ」
そう言って、日和は小太郎の目をじっと覗き込む。不思議な光をもつ日和の目に見つめられ、
小太郎はいたたまれなくなって目を逸らした。
「そ、そうですか?僕、普通ですけど・・・」
「そうですね。おそらく、あなたの本質を表しているのでしょう。気は魂、気は心です」
顔は近いまま、にこりとまた笑う。
「・・・そうですか?」
「ええ、そうです。小太郎、自信を持ってください。白迅は、あなたを困らせるかもしれないけれど、
決して悪くはしないはずですよ」
不思議と、日和にそう言われるとそんな気がする。小太郎は真剣な面持ちで頷いた。
「本当は、私も契約してあげたいのですけれど。・・・今は、まだ」
「え?どういうことですか、日和さん」
小太郎がきょとんとすると、日和は楽しそうに言った。
「小太郎、実は私はね、夜狩にも負けないほどの暴れん坊だったのですよ」
いきなりの発言に、小太郎は目を見開いた。
「え・・・えええええっ!?」
「ふふふ、遠い昔の話です。懐かしいですね。迎えが来たようですから、この話はまた機会があったらお話しましょう、小太郎」
「・・・・・・なんか、うまいこと話逸らされたような気がする・・・」
「おーい、小太郎〜!!帰るよ〜!!」
そこに日和の言葉どおり白迅が小太郎を迎えに来て、小太郎は日和と別れて帰路についた。