番外編参


「小太郎!!小太郎ー!!」
清江の呼ぶ声がして、小太郎は読んでいた雑誌から目を上げた。
「小太郎、アンタ暇でしょ?ちょっと買い物行ってきてほしいんだけど」
「えー?僕が?母さん、昨日買い物行ったって言ってたじゃないか」
面倒くさい、と小太郎が言うと、軽く頭を小突かれた。
「あると思ってたらお醤油がなかったの。ついでに、何かお惣菜も買ってきてほしいから、
ぶーぶー言ってないで行ってきなさい」
「・・・わかったよ。でもそのかわり、おつりは貰うからね」
嫌々行くのだから、おつりぐらいは貰ってもいいだろうとの交渉も成立し、小太郎は必要経費を持って玄関に向かった。
「あれ?小太、どっか行くの?」
「白迅。おつかいだよ、お醤油とおかず買いに行くの」
途中で白迅に見つかり、面倒なことになりそうだと小太郎は密かにため息をついた。
「僕も行く!!小太郎一人じゃ危ないよ!!」
「言うと思ったよ!!ダメっ!!お前目立つじゃないか!!」
やはりこうなると予想はしていたが、まさか本当に思った通りの台詞を言われるとは、小太郎も思っていなかった。
「ドコが目立つんだよ〜!!僕、こんなにおとなしいウサギなのに!!」
「耳!!その耳!!あと、着物も派手だろ、お前!!」
「え?」
耳。そう、人間の耳はそんなに長くはないし垂れていない。白くてふかふかでもない。
ついでに赤を基調とした着物は、かなり派手である。
「だからダメ。それに、ちょっと行ってくるだけなんだから、危なくなんかないだろ」
「うう・・・。そ、それでも危ないの!!近くだろうが遠くだろうが、キミが狙われやすいのは変わらないんだからね!?
そうだなあ・・・じゃあ、僕以外のヒトについてってもらってよ」
「え?」
今度は小太郎がぽかんとする番だった。
「だから、僕がダメっていうなら、小太郎がいいと思うヒトを連れて行ってよ。小太郎一人じゃどうやったって危ないんだから。
しょぼしょぼのヘボヘボで、すぐ闇にぱっくり食べられちゃうよ。闇は場所を選ばないから」
「しょぼしょぼのヘボヘボで悪かったな。・・・・・・わかったよ」
一度言い出すと頑固なウサギの出した妥協案に、小太郎はとりあえず頷いた。
「一緒に行っても大丈夫そうな神様か・・・」
小太郎は考え始めた。
日和がいれば日和についてきてもらいたかったが、日和の時間はもうとっくに終わっている。
かと言って夜狩では、問題を起こしかねない。
同じ理由で、八魂も連れてはいけない。
「昇姫・・・はどうだろう?」
一度は思ったのだが。
「ダメじゃない?だってさ、ヒレ(?)が見えちゃってるよ?」
白迅の言葉に加えて、知り合いに見られると確実にひやかされるので断念。
「あれだけの美人だしなあ・・・。あっ!!」
残る一人に、とても適任な人物がいた。
「唐紅さんについてきてもらおう!!」
「うん、からさんなら安心して僕も任せられるよ〜。いってらっしゃい、小太郎!!」
ようやく白迅から外出許可が出て、小太郎は家を出た。