番外編四・2


「・・・ちょ、待って、八魂・・・き、休憩しよう・・・」
ぜえぜえと息を切らしながら、小太郎は膝に手をあてがくりと肩を落とした。
「えー、体力無いぞ小太郎!ま、いいや。休憩しよっ」
対して、全く疲れを感じさせない八魂は、身軽に地を蹴り公園のベンチに着地し、すとんと座る。
小太郎はといえばのそのそと歩いてベンチまでたどり着くと、疲れ切った様子でどかっと座った。
おにごっこから始まり、持ってきたボールで様々遊んで小太郎はぐったりとしている。
夕方の公園は子供たちも帰った後で、静まり返っている。
もう日が大分落ち、どんどん紺が朱を侵食していく。
「はー、疲れた・・・。八魂、元気だね」
神だから、というよりは八魂がそうなのだろう。
にっと口の端を上げると、八魂は弾んだ声で答えた。
「うんっ!小太郎が遊んでくれるっていうから、はりきっちゃった!」
それから、星が出始めた空を見つめて言う。
「遊んでくれる人とか、優しくしてくれる人は好きだぞ。小太郎とか、・・・夜狩も一応なっ。
香仙もたまに構ってくれるし、唐紅も、日和も昇姫も優しいし」
足をぶらぶらとさせて、八魂が嬉しそうに語る。
これで名前が出ていないのは白迅だけになる。
それだけ「チビッコ」発言は八魂にとって衝撃だったのだろう。
小太郎はちょっとだけイタズラ心が起きて、その名前を口にしてみる。
「八魂、白迅は?」
「あんな奴、大嫌いだっ!!チビッコとか言うし、上から見おろしてくるし、子ども扱いするしっ!」
すると何かスイッチが入ったようにぎゃんぎゃん文句を言い始める八魂に、小太郎が笑う。
「あははは・・・ごめん、八魂が白迅のこと嫌ってるの分かってて聞いたんだ」
「もー、小太郎っ!!からかうなよー!」
言いながらも、八魂の顔は楽しそうだ。からかわれたと知って、恥ずかしそうに笑う。
その様が本当にちょうど弟のように幼いのでつい頭を撫でたくなったが、
子ども扱いして機嫌を損ねてはいけないと、小太郎はぐっとこらえる。
「ごめんってば。よし、もう遅いしジュース買って帰ろう。八魂、何がいい?」
そう言って小太郎がボールを脇に抱え、財布片手に立ち上がると、八魂はぱあっと目を輝かせた。
「りんご!!」