番外編漆・3


「ふー、完了完了〜。良かったね小太郎、万事解決〜」
ぱんぱんと埃を払いながら、白迅が言う。
「ったく、狭いったらねえな・・・次呼ぶときは、もっと広い場所にしろよ」
夜狩が場所に文句をつけるのを聞き、小太郎が苦笑する。
「そんなこと言ったって、僕が場所を選べるわけじゃないんだから」
「まあな。わかってるさ」
冗談だよ、と笑われ小太郎はますます苦笑する。
「・・・小太郎、また何かあればすぐに呼びなさい」
「はい、お願いします」
心配して言う唐紅に、小太郎は笑顔で答えた。
そこに、広が慌てたようにばたばたと走ってきた。
「おーい、小太郎!!どうしたんだ?待ってても全然出て来ないし、ぴかっと光るからさ、慌てて来たんだぜ!?」
「あー!ひろ!!よくも置いて行ったな!?」
小太郎が思い出したように言うと、広は頭を掻きつつ苦笑した。
「ごめんなー。まさかお前がそんなに足遅いとは・・・」
「お、遅くはないよ!ただちょっと・・・足止めをくらって」
「足止め?・・・・・・つーかさ、・・・この人たち、誰?」
知り合いか?と聞かれ、小太郎は後ろを振り返る。
「し、しらっ・・・」
「ど〜も〜」
白迅、と言いかけた小太郎は口を塞がれ、代わりにいけしゃあしゃあと挨拶して白迅がにこやかに言った。
「えーと・・・しら・・・しら・・・・・・白石でーす」
「〜〜〜!?」
「・・・白石さん?」
白石と名乗った白迅に、驚いて小太郎が口を塞がれたまま喚く。
対する広は、不審そうな目で白迅を見つめた。
「うん、そう〜。えーと、小太郎の・・・近所の神社の人でーす」
「ああ、そうか。それで着物なのかー」
納得した様子の広に、小太郎は目を丸くする。
それでいいのか。
「こっちがやか・・・か、狩野さんで、こっちが・・・から・・・さわさん」
適当な名前でその場をやり過ごそうとする白迅に、後ろから物言いが入る。
「おい、しらは・・・」
「ちょ〜っと黙ってて?狩野さん」
にこり。
振り返った白迅の笑みがあまりに輝いていたため、狩野・・・もとい夜狩は顔を引きつらせて言葉を失った。
「・・・・・・・・・」
唐沢、もとい唐紅は結構どうでも良さそうに佇んでいる。
「えーと、皆神社関係者だからこんな格好なんだけど、怪しいものじゃないから〜。清江さんに頼まれて来たんだよ。ねっ!」
ばっと後ろを振り返る白迅に、夜狩がかくかくと頷く。
唐紅は微動だにしないが、広はそれで完全に納得したようだった。
「ああ、小太郎のお母さんね。・・・じゃ、とりあえず帰るか、小太郎」
広が小太郎に話を振ると、白迅はぱっと小太郎の口を塞いでいた手を離した。
「ぷはっ・・・う、うん。そうしようか」
「あ!僕らは勝手に帰るよ〜。じゃーね、小太郎。僕ら先に帰るね」
さあさあ行こう、と残り二人の背を押して撤収した白迅を見送って、小太郎は広を振り返った。
「じゃ、じゃあ・・・気にしないで帰ろうか!」
そんな小太郎と白迅たちが帰って行った方向をそれぞれ見つめ、広がぽつりと呟いた。
「・・・今の神社は、服装結構アバウトなのか?」

「ただいまー・・・」
「おっかえりー、小太郎!」
「・・・白迅!!何なんだよあのごまかし方はー!!」
「わあ、ごめんー!!だって、帰る暇無かったんだもん〜!夜狩だってからさんだって同罪じゃないのー!?」
「お前が一番悪いっ!!」
「小太郎〜!!」
帰ると一番に出迎えに出た白迅に、小太郎は声の限り叫んだ。
それから白迅が、小太郎に説教をくらったのは言うまでもない。