弐拾漆


「まったく、二人とも反省してよね!!」
小太郎は、唐紅の術によって眠らされた二人が目覚めるのを待って、さっそく説教を始めた。
「・・・ごめんなさい、反省してます」
「何でオイラが説教されなきゃなんないんだよっ!」
しゅんとする白迅に、噛み付くような勢いで反発する八魂。
「あのね。・・・このひどい状態を見なよ!!葉っぱがほとんど散っちゃってるじゃないか!!あと!!
所々に焼けた跡があるでしょ!!これ、みんなお前たちのせいなんだからね!!」
あちこちを指差して尚も言う小太郎に、唐紅が言った。
「・・・木々や他人を思いやるところは、以前のままなのだな」
「唐紅!!今までどこにいたんだよ!!いきなり出てきてオイラを眠らせるなんて、卑怯だろーっ!!」
八魂が小太郎には勝てないとみたのか、今度は唐紅に突っかかる。
「・・・・・・我は小太郎と契約を交わした。なれば我がここにいるのは自然なこと。我が出てきたのも突然ではない。
今までずっと、お前の社の近くで眠っていた。気づかなかったのか」
「うう〜・・・」
唐紅にも言い込められて、八魂は言葉に詰まった。
「からさん、久しぶりじゃーん!今まで寝てたって、まあ相変わらずだね〜」
「・・・白迅。お前も相変わらずだ」
白迅に話しかけられると、唐紅は軽くため息をついた。
「小太郎、からさんまで味方につけるとは、偉い!!からさんがいれば百人力だよ〜?」
「そ、そうなの?」
一転、元気になった白迅に、小太郎がきょとんとする。
「・・・唐紅まで味方してるんじゃ、オイラには勝ち目なんかない・・・・・・よしっオイラも契約する!!」
八魂が唐突にそう言うと、白迅がからかうような調子で言った。
「あれ〜?八魂、僕も小太郎の味方だってこと、忘れてない?」
「うるさいぞ!!オイラはお前の味方するんじゃないんだから!!」
言うが早いか、ばっと立ち上がって小太郎の正面に立った。
「契約っ!!」
「え、あ、うん」
言われて小太郎がぴしっと直立すると、八魂は契約印を描いた。
すうっと消えると、八魂はびしっと小太郎を指差して言った。
「お前の味方をするんだからな!!絶対、アイツの味方じゃないんだからなっ!!」
あくまで白迅の味方をするわけじゃないと主張する八魂に、小太郎は苦笑した。
「はいはい。これからよろしく、八魂」
「うん!!」
八魂は、小太郎にはにこっと笑顔を見せた。

「・・・我は楓へ戻る。必要ならば呼べ。駆けつけよう」
「オイラはここにいるからな。たまにはお前のほうから来てくれなっ!」
二人はそう言うと、小太郎と白迅を見送った。
「じゃあ、また!」
「八魂、もう暴れちゃだめだよ〜?」
「うるさいっ!!さっさと帰れ!!」
白迅には何かと突っかかる八魂に苦笑して、今度こそ小太郎は帰路についた。
「いやあ、大変だったなあ〜。小太、大丈夫だった?」
「何が大丈夫だった?だよ!!唐紅さんが来てくれなかったら大怪我するところだったよ!!」
小太郎がそっぽを向くと、白迅はまあまあと言って小太郎を宥めた。
「仕方ないじゃん。八魂のおバカが僕の言ったことにいちいち目くじら立てるんだからさ〜。
全く、アイツはちっとも変わらないったら」
ぶつぶつ言う白迅に、小太郎は嫌な予感がしながらも言った。
「白迅。・・・もしかしてお前、忘れたフリしてただけで、本当は八魂のこと、覚えてたんじゃ・・・」
すると白迅はあさっての方向を向いて、言った。
「そんなことも、あったりなかったり」
「こらーっ!!じゃあ、何も戦う必要なんてなかったんじゃないか!!どうするんだ、あの神社の惨状は!!」
「だから、ゴメンってば!!ちょーっとからかっただけなのに、八魂が本気に取るんだもん〜!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、今度こそ道を間違えないように帰らないと、と小太郎は思ったのだった。