参拾四


「・・・・・・神々が集った、か・・・」
暗い、暗い空間。何処とも知れぬ場所で、声がする。
「早くしなければ・・・オレの目的は達成できない・・・」
徐々に闇が晴れる。光を嫌うように、人の形をした影は、隅の方へ体を傾けた。
「破滅の力を、発現させる・・・そのために・・・!」
一瞬、ちらりと見えた眼は、大蛇のように冷たい光を放っていた。

「・・・・・・・・・!!」
がばっ、と勢いよく小太郎は起き上がった。
呼吸が乱れ、心臓は激しく脈打っている。何か、悪い、とても悪い夢を見ていたような気がする。
「し、白迅・・・白迅っ!」
不安で仕方が無い。誰か傍にいて欲しい。そんな衝動に駆られる。
それは本当に自分の望みなのか、それとも夢がそうさせるのか、それすらもわからない。
姿が見えない白迅の名を呼ぶと、階段を駆け上がる音がしてすぐ、部屋の扉が開いた。
「どうしたの!!小太郎っ!!」
心の底から心配する瞳。それを見て、小太郎は泣きそうに顔を歪めた。
「白迅〜・・・」
「えっ、ホントにどうしたの、小太郎?・・・夢を、見たの?」
よしよし、と背中をさすりながら尋ねた白迅の問いに小太郎が頷くと、白迅は神妙な面持ちで言った。
「それは・・・よし、からさんに来てもらおう、ねっ、小太」
大丈夫だよ、と何度も何度も、繰り返して白迅は言った。
それはまるで、小太郎以外の誰かに言っているような響きを持っていた。

「・・・・・・・・・そうか・・・」
特殊な力で小太郎の夢を視た唐紅は、静かに言った。
「からさん?どんな夢だったの、結局〜」
白迅がふかふかの耳を弄りながら尋ねる。
小太郎も今は落ち着いたようで、静かに唐紅の次の言葉を待っていた。
「・・・おそらく、小太郎が見たのは闇を放っている人物だ。我らとは対極に位置すると思っていい」
唐紅の言葉に、白迅が真剣な顔になる。
「我に心当たりがある。・・・早急に皆を呼び集めなさい。話がある」
唐紅が言うと、小太郎と白迅は頷いた。
契約している者を小太郎が呼び、白迅は契約こそしていないものの、協力関係にある者の元へ走った。
唐紅はその間、目を閉じ、じっと動かずになにやら思いにふけっているようだった。