参拾陸


「とりあえず、敵の正体がはっきりしただけでも、儲けもんだよね〜。しかも相手は、僕たちよく知ってるじゃん。
有利だよ、有利!!大丈夫!!」
「そうか・・・そうだな・・・。我は、そのような事も忘れていたか・・・」
唐紅がふっと笑った。
「さて、小太郎。時は満ちたようです。・・・私も、貴方と契約しましょう」
「え?日和さん・・・」
裾を払って立ち上がった日和に、小太郎がきょとんとする。
「以前までは、時期が悪かったのです。今なら、大丈夫。よろしいですか?」
「は、はい・・・お願いします」
小太郎が頷くのを見ると、日和が契約印を描き始めた。
その紋様は、今までのどれよりも細かく、繊細な模様のような気がした。
すっと、小太郎の体に吸い込まれるように消える。
「・・・はい、終わりました」
「改めてよろしくお願いします、日和さん」
「ええ。何かあったら、いつでも呼んで構いませんよ。私にも、貴方を守るくらいの力はありますから。
ただし、陽のある間に」
そう言ってにこりと笑う日和に、小太郎も笑顔を返した。
「そうね・・・わたしも、あなたと契約します。わたしも、そろそろ力が戻ってきたから、あなたを助けたいの」
「え、でも、昇姫・・・」
女神様にまで、戦わせていいのだろうかと、小太郎は戸惑う。
「大丈夫、わたし、こう見えて強いです」
にこっと笑って拳を握る昇姫に、小太郎は苦笑した。
そこに、白迅が口を挟む。
「大丈夫だよ〜、小太。昇姫、こう見えてかなり強いよ?闘神って、言われるくらいだからね〜」
「え!?」
そういえば以前、昇姫と対面したとき、『ちょっと風の噂で聞いて知っている』と言っていた。
まさかその噂が、こんな噂だとは。
「ええそうです。それ、わたしのこと。ね、だから大丈夫です。小太郎、契約してもいいでしょう?」
「は、ははは・・・。うん、いいです。お願いします」
乾いた笑いを漏らす小太郎には構わず、昇姫は契約印を描いた。
すっと、小太郎の体に吸い込まれる。
「じゃあ、これからはいつでも呼んでね。駆けつけるわ」
「はい」
頼もしい協力者に、小太郎は笑顔を見せた。