参拾漆


そんな会話をしていると、日和に変化が起こった。淡い光を放っている。
「ああ・・・交代の時間のようです」
次の瞬間、日和から眩い光が溢れる。
それが収まる頃には、夜狩の姿があった。
「・・・・・・悪いな、自動交代だからよ」
そう言いながらも、にやりと笑っているその顔は少しも悪いとは思っていないようだ。
「夜狩も、今までの話は聞いていたんだよね?」
小太郎が尋ねると、夜狩は頷いた。
「ああ。まさかこんなことになるとは思ってなかったが、俺は別にどうでもいい。戦えればな。おい小太郎、
陽が落ちたら真っ先に俺を呼べよ。牙血の野郎をぶん殴ってやる」
「ははは・・・」
小太郎がそれに呆れたように笑う。
「それじゃ、今日はこんなモンで深刻な話はお開きにしようよ!」
白迅がそう言うと、皆思い思いに帰っていった。
夜狩は、まだ来たばかりだからと残ったが、そう長くもいないだろう。
白迅は階下にせんべいを取りに行ったので、小太郎は夜狩に尋ねてみた。
「ねえ、牙血って人、神様・・・なんだよね?」
「あ?・・・ああ、そうか。お前は知らないんだったな。ああ、そうだ。あんな奴でも一応な」
最初は怪訝そうな顔をしたが、夜狩はすぐに納得して、肯定した。
「嫌な奴だぜ。あんな奴とまた顔合わせるかと思うと、ぞっとするぜ」
心底嫌そうな夜狩の顔を見ていると、そんなに嫌な奴なのかと不安になる。
「そ、そんなに・・・怖い神様なの?」
「怖いってわけじゃねえさ。ただ、俺らとはまるで逆だ。俺らはお前を守る。つまり、希望へと力を発現させることを望む。
だが奴は、お前を追い詰めて、破滅へと力を発現させようとしてやがるに違いねえ」
その言葉に、小太郎がますます怯える。
「僕・・・ひょっとして殺されたりなんか・・・」
「しねえよ」
尋ねた小太郎に夜狩が即答したことで、小太郎は僅かにホッとする。
「絶対に殺しはしねえ。だがよ・・・」
そこで急に勢いよくドアが開いて、白迅が現れた。
「た、大変だよ!!」
「な、どうしたの白迅!!」
深刻な白迅の声に、小太郎が振り向く。
夜狩も、目線を上げて真剣な目で白迅を見た。
「・・・・・・・・・おせんべいが、ないんだ」
「・・・・・・・・・・・・この、バカウサギ〜〜っ!!」
小太郎と夜狩、綺麗に声が重なった。