「・・・・・・・・・!」
その頃、小太郎の家でせんべいをかじりながらテレビを見ていた白迅は、強い思念を感じた。
「・・・小太?」
呼ばれた。そう感じた。
白迅は立ち上がり、さっとテレビのスイッチを切ると駆け出し、庭に向かった。
外じゃないと、小太郎の思念を感じ取りにくい。
そう考え庭に立つ。目を閉じ、追いかける。赤い光が頭の中に浮かんだ町の地図を奔る。
角を曲がり、坂を駆け上がり、赤い光が着いた先は。
「・・・小太郎、まだ学校にいたのか!」
場所は、1階階段付近。それを確認し、精神を集中する。
「白迅くん、おせんべい食べかけだけど・・・・・・あら?」
清江が庭に顔を出したときには、既に白迅の姿はなかった。

「いてっ」
小太郎はどこかに落ちた感触を感じ、ぎゅっと瞑っていた目を開いた。
さっきよりは薄い闇の中、しかし状況は変わらず一人。
「ここ・・・本当に学校か?」
信じられない。そんな思いで周りを見回す。
その時、微かに笑い声が聞こえたような気がした。
「・・・え?」
笑い声は段々近くなる。小太郎はきょろきょろと周りを見るが、何もいない。
「し、白迅・・・っ!」
小太郎は呼んだ。
「早く来いよっ、白迅っ!!僕を守ってくれるんだろ!!」
目の前の闇が割れた。
「小太郎っ!!・・・よかった、無事だね?まったくもう〜、呼ぶのが遅いよ」
割れた闇の隙間から漏れる白い光から現れた、すでに見慣れた姿に小太郎は思わず笑った。
「仕方ないだろ、今思い出したんだから」
「さて、・・・今ので契約交渉は成立とみてもいいのかな」
白迅がうんうん頷きながら放った言葉に、小太郎は目を見開く。
「え!?な、何でそんなことに!!」
「あれ、気づかなかったの?キミ、無意識かも知れないけど僕に願ったんだよ。『守って欲しい』、それがキミの願いだよ」
ならば願いを叶えるのがつとめ。白迅はにこりと笑った。
「・・・ま、いいか。さて、お約束通りキミを助けようか。鞄しっかり掴んでね〜」
「・・・・・・・・・へ?」
白迅が急なことで呆気にとられている小太郎をさっとかついだ。
「うわわわっ!!こらあっ白迅!何するんだよ!」
「ふっふっふ、闇を抜けるにはどうするか知ってるかい?小太郎」
「え?」
「この闇は素早く前に回りこんで人を閉じ込める。なら・・・」
きゅ、と白迅は足袋が脱げないように、しっかり確かめる。
次の瞬間、小太郎は呼吸をするのもやっとなほどの風圧に押された。
「うっ!?」
「闇が回り込むより早く逃げればいいんだよ〜!」
三十六計逃げるにしかず。そういわんばかりに、小太郎をかついで白迅は走った。