四拾壱


「・・・小太郎っ!!小太郎ってば!!」
はっと目を開く。
目の前には、見覚えのある垂れた目。
「・・・・・・白迅・・・?」
「小太郎〜・・・びっくりしたよ、急に気配がなくなるんだもん。かと思えば、急にココに気配が現れるから・・・」
安堵したように力を抜いて肩を落とす白迅の後ろから、夜狩も現れた。
「・・・ったく、心配かけてんじゃねえ、がきんちょが!!」
「うっ・・・ご、ごめん」
言葉とは裏腹に小太郎の頭をぐしゃぐしゃとかき回すように撫でる夜狩に詫びながら、
小太郎は半身を起こした状態で考えを巡らせる。
歩いていたときは、まだ日が落ちてはおらず、日和の時間だったはずだ。
それなのに、今空には星が出ており、夜狩がいる。
「小太郎っ!!何があったんだよ、オイラ心配したんだぞ!!?
急にいなくなったから、オイラ頑張って探したのにいなくて・・・っ!!」
「小太郎!・・・ごめんなさい、わたし、何もできなかった・・・」
「八魂、昇姫・・・ごめん、心配かけたんだ・・・」
昇姫に笑いかけ、大丈夫だと言い、半分泣きそうになっている八魂の背中を撫でて落ち着かせていると、
唐紅と香仙が木の陰から姿を現した。
「もうっ!!小太郎ちゃん、心配したじゃない!!オカマを心配させないで頂戴!シワが増えるでしょ〜っ!?」
「香仙さん・・・すみません、心配かけて」
冗談交じりに叱られ、抱きつかれたが、目が真剣だったため小太郎は申し訳なく思った。
「・・・皆、密かに小太郎の様子を窺っていたのだ。突然、
お前の気が文字通りこの空間から消失した故に、皆で探していた」
落ち着いている唐紅に、小太郎は事情を話そうと試みる。
しかし上手く言葉に出来ない小太郎が今あった事を見てくれるよう頼むと、
唐紅は頷いて、じっと小太郎を見つめた。
「・・・・・・・・・夏緒・・・」
呟かれた言葉に、はっと皆が唐紅を振り返った。
「え?・・・からさん、今何て・・・」
「おい、会ったのか、小太郎。夏緒に」
夜狩が小太郎に問う。頷くと、八魂も目を丸くして小太郎を見つめた。
「うむ・・・皆が見た方が早いだろう。皆に術をかける」
言葉で何を言っても、見る程は理解できない。
そう考えた唐紅は、指を一つ鳴らす。
たちまち、辺りが鮮やかな楓の嵐に覆われた。