四拾弐


「・・・夏緒・・・どうして、こんなことが起こったんだろう・・・」
白迅が顎に手を当てて考え込む。
「魂の欠片・・・?いや、だってなあ・・・」
夜狩も眉間に皺を寄せて考えているが、あまり期待出来そうにない。
八魂も、香仙も真剣な顔で話をしているが、不思議なことに小太郎は気づいた。
「みんな・・・夏緒さんの話しかしてない・・・?」
無明に会った事は、唐紅が隠しておいたのだろうか。
「あの、唐紅さん」
「・・・どうした」
「夏緒さん以外の事は・・・」
そう切り出すと、唐紅は微かに首を傾げた。
「夏緒以外の事・・・?何かあったのか、小太郎。あれより前の時、お前は普通に道を歩いていたが・・・」
「え?」
唐紅が見た内容に、無明はいなかった。
しかし、小太郎が無明に会ったのは事実である。
「小太郎。何かあったのか。・・・我の見たお前には、何も異常は無いようだったが・・・」
「あ、いえ、何でもないんです。本当に」
無明は唐紅の過去視に映らなかった。
その意味は分からないが、小太郎は無明の存在を隠しておいた。
きっと、何か意味があるのだ。
「からさん、夏緒・・・小太郎にまだ言いたいことがあるって言ってたよね」
「ああ・・・」
白迅が口を挟んで、唐紅の意識がそちらに逸れる。
これで無明の事は唐紅にも隠しておけるだろうと、小太郎はほっと息をついてそっと傍を離れた。
「牙血の野郎・・・闇を集めてやがったとはな。しかも、闇に言う事を聞かせられるってことは、相当に力を溜め込んでやがる」
夜狩が苛々と言い放つ。
「闇は、アタシたち神の成れの果て・・・一体一体にそれなりの力があるはずだものねぇ」
ため息混じりに、香仙が夜狩の話に加えて言う。
「な、小太郎。危なくなったら、オイラ呼ぶんだぞ!!絶対助けに行ってあげるからなっ!」
八魂の頼もしい言葉に、小太郎が笑顔になる。
「ありがとう、八魂。すぐ呼ぶよ」
ひと段落ついたところで、唐紅と話し込んでいた白迅が皆に声をかけた。
「さっ、そろそろ帰ろうよ!遅くなっちゃったから、清江さん心配してると思うし」