四拾四


「よう。・・・しけた面してんな、白迅。お前、まだそんなことチンタラ説明してたのか」
入るぞ、と言って、小太郎がためらっているうちにさっさと中へ入ってしまう。
「う・・・。だ、だってさ・・・僕だって、どう説明していいか」
珍しく食って掛からずに俯く白迅に、夜狩はにやりと笑う。
「なら、説明しなけりゃいいだろ。俺らはこいつ、小太郎を守る。それが役目だ。その事実は変わりないだろうが」
「だ、だってだって!!キミだって分かるはずだよ、いや、分かってなかったとしても・・・
もう避けられない、動き出してるよ、全ては!!もう僕は繰り返したくない、そんなの夜狩、キミだって・・・」
「知ってるさ」
最初は戸惑うように、途中から激昂したように、落ち着かなく話す白迅に、真剣な顔で夜狩は言う。
「知ってるからこそ、俺はお前の敵にはならねえ。そうだろうが、バカウサギ」
その言葉にきょとんとして、それから気が抜けたように白迅は、ふっと表情を崩した。
「夜狩・・・キミって奴は・・・」
「白迅・・・」
小太郎が遠慮がちに口を挟む。
「小太郎。ごめん・・・何か僕、情けないや」
「ううん、そんなことないよ、白迅」
この魂が守られることが、彼らのためになるならば。
「ありがとう・・・小太郎。僕、もうちょっとしっかりするよ」
この魂を守ることで、この世界を守れるならば。
もう、迷わないと二人は互いに頷いた。

「おい、白迅・・・お前、すっきりしたみてえな面してやがるがな、肝心なことが抜けてるだろう」
「え?・・・何、まだ何かあったっけ?僕、全部話したような気がするんだけど〜」
すっかりいつもの調子を取り戻した白迅にため息を一つついて、夜狩は首を振る。
「おいおい、待てよ・・・。牙血の野郎の話をしてねえぞ」
「うん・・・?でもほら、それはそんなに重要なことでもないかなあ、なんて・・・」
「白迅〜?」
白迅をじとーっとした視線が射抜く。
「こ、小太〜。あらら、何にも話してなかったっけ?牙血のコトは」
「ほとんど何も知らないようなものだよ!!こらー!!全部話すんじゃなかったのか、白迅!!」
「うわ、ごめん〜!!わざとじゃないんだよ、ホントだよ〜!!」
クッションを投げ始めた小太郎の攻撃を、頭を抱えて防ぐ白迅という光景に、夜狩はまた一つ、ため息をついた。
「・・・まあ、いいか。バカウサギの言うとおり、そんなに重要でもないかも、な」
仕方ない、と呟いて歩み寄る。
小太郎の髪を掻き回して宥めると白迅をからかい、夜狩はいつものように、にやりと笑った。