四拾陸


そして後ろからまた声がかかる。
「二人とも元気なのはいいけどねぇ、足を進めなさいな。帰らない気なのかしら?」
「え?」
白迅と小太郎が驚いて振り向くと、香仙がにっこりと笑って立っていた。
「香仙。あなたも来たのですか」
日和が言うと、香仙は困ったように頬に手を当てて答えた。
「アタシの場合は、小太郎ちゃんの気配がいつまで経ってもここから動かないから、心配して出てきたのよ。
まさかただ言い合いしてるだけだったなんて、全く呆れちゃうわねぇ」
「あはは・・・ごめーん、香仙」
悪びれず軽く謝る白迅に、香仙が人差し指で額を突いた。
「全く、アナタは少し成長なさいっ」
「あいたっ」
「すみません、香仙さん。わざわざ出てきてくれたのに」
小太郎が申し訳なさそうに言うと、にこりと笑って頭を撫でる。
「もぅ、小太郎ちゃんってば可愛いわねぇ!!いいのよいいのよ、気にしないで頂戴な」
「・・・そもそも我らはお前を護るのが務め、気にすることは無い」
「そう、そういうことなのよ・・・って!」
驚いて全員で振り返ると、そこには唐紅が佇んでいた。
「か、からさん〜!!びっくりさせないでよ、どうしたのさ〜!」
白迅が大げさに喚く。
「・・・いつまで経っても移動せぬ故、何かあったのかと思ったのだが・・・」
違ったのか、と唐紅が淡々と言う。
「あははっ、またやっちゃったな!!」
八魂が楽しげに笑った。
「ふふふ。さあ、帰りましょうか、小太郎。このままでは昇姫も来てしまいかねません」
「ははは・・・。そうですね・・・」
そう言って歩き出そうとしたとき、声がした。
「もう、来てしまいました。小太郎、無事なのね?」
「の、昇姫!?」
宙からすっと姿を現した昇姫に、小太郎は目を丸くする。
「ありゃ〜・・・昇姫も来たのか〜。全員来ちゃったじゃん」
白迅が苦笑しながら言う。
「誰のせいだと思ってるのよ、もう」
「そもそも貴方が発端でしょう?」
「お前が悪いんだぞっ!」
香仙、日和、八魂。三人三様、しかし内容は同じ事を言われ白迅は肩をすくめた。
「はいはい、僕のせいです〜。ごめんってば」
「ふふっ、わたし、皆で居るの楽しいです」
「そうだね。・・・帰ろうか」
ようやく歩き始めた小太郎に、皆が続いた。