「頼むから、これ以上は聞かないでよ〜。もう、僕もうっかり言っちゃったらどうしようなんて、気が気でないんだから」
ふーっと息を吐いて、ベッドにばたっと倒れた白迅を見て、小太郎は苦笑した。
「・・・分かったよ。ごめん、無理言って」
「いえいえ〜。小太があんまり必死なもんだから、僕もつい本気になっちゃったよ〜」
「だから、ごめんってば」
多少もやもやしたものは残ったが、小太郎はとりあえず納得することにした。
「おやすみ、白迅」
「おやすみ〜、小太郎。・・・明日も学校かい?」
「うん、そりゃあね。平日だし」
それを聞くと、白迅はがばっと起き上がった。
「ど、どうしたのさ」
「それは大変だ!またあいつに閉じ込められたらどうするつもりなんだよ〜!」
「だって、仕方ないだろ。僕、学校行かなきゃいけないし」
小太郎も半身を起こして反論すると、白迅はうーんと考え込む仕草をしてから、懐から何かを取り出した。
「・・・じゃあ、これを持っていくといいよ。急ごしらえだから、効果抜群とはいかないけどね、ないよりましなはずだよ〜」
「これ・・・お札?」
白い紙に、赤い紋様が書いてある。小太郎が聞くと、白迅は頷いた。
「そう。まあ持ってるだけで身を守れるように作った・・・はず。鞄にでも入れておいてね。ははは・・・
僕、あんまりコレ得意じゃないから、後でこういうの得意なヒトに作ってもらおう〜」
得意なヒト、というのはやはり公園で話した味方を増やす話のことだろう。小太郎はそう考えて納得した。
「うーん・・・ちょっと不安だけど、ありがとう白迅」
「いや、これでもね、何もないよりははるかにマシなはずだよ。うん。まあ万が一・・・より、確率は高いかもしれないけど。
破れるようなことがあったら僕を呼べばいいでしょ」
にこりと笑う白迅に、少し引きつった笑顔を返して、今度こそ小太郎は電気を消した。

「さて、休日ですね小太郎くん」
「そうですね白迅さん」
ざ、と二人は玄関を出る。
「よーっし、そこかしこの神社!寺!全部回るよ小太郎!」
燃える白迅に、小太郎はため息をついた。
「・・・全部なんて、無理だよ。この町、無駄に歴史長いからそんなのいっぱいあるよ」
あれから何事もなく中学校生活をやり過ごした小太郎は、仲間を増やそうとやかましく言う白迅に引きずられるように、外に出たのだった。
「大丈夫。力のある神がいる神社とか寺は、普通のトコとは感じが違うから。それに、この町なら知り合いもいるかもね」
「やっぱり、神様の間にも知り合いとかあるんだ」
小太郎が感心したように言うと、白迅は頷いた。
「そりゃあそうだよ〜。もちろん、仲が悪いのもいるし。そうだな・・・とりあえず今日は、僕の知り合いを探そうね〜。
この近くにいるはずなんだけど」
突然飛び出した情報に、小太郎が目を丸くする。
「えっ!?そんなすぐ見つかっていいようなものなの、神様って!!」
「うん?何で?いいじゃんその方が。小太郎、この近くに・・・二つで一つみたいなもの、ないかな?」
「二つで、一つ・・・?」
唐突な白迅の問いに、小太郎が首を傾げる。
「そんな、急に言われても・・・。あっ!そうだ、ここを離れる前に母さんに聞いてみよう!何か知ってるかもしれない」
二人は玄関前で立ち止まっていたことを唐突に思い出し、再び家に入った。