「さー、そろそろ本題に入っていいかな。二人とも、随分仲良くなったようだし。・・・日和、キミの力を貸してほしいんだよね」
「・・・私の?」
白迅がさらりと言うと、日和が不思議そうな顔をした。
「白迅、貴方が一番分かっているはずですよ。私は争いを好まない」
「あらー、さすが日和、そこまでわかっちゃったのか」
白迅が気まずそうに頭を掻く。
「当たり前でしょう。貴方が来た時は、なにかしら事が起こっている時。全く、その度に私は酷い目に遭ったものです」
「しーらーはーやー!!そんなことしてたのか、お前は!」
「わあっ、小太郎!そんな怖い顔しなくたっていいじゃないか〜!!」
「人様に迷惑をかけるんじゃない!!」
「ごめんって〜!!」
突然始まったかけあいに、日和は目を丸くしていたが、やがて笑い声が漏れた。
「・・・?」
二人は突然笑い出した日和に、ぽかんとした顔を向けた。
「ふふ、貴方たちは本当に、仲がよろしいですね。・・・分かりました、白迅。小太郎。
貴方たちに私も協力することにしましょう」
「え?ほ、本当にいいんですか!?」
今度は小太郎が目を丸くする。
「ええ。・・・白迅、貴方のためですよ。繰り返したくないのでしょう?」
「うん・・・ありがとう、日和」
二人の会話の意味はやはりわからなかったが、小太郎は日和が協力してくれることが素直に嬉しかったため、
気にしないことにした。
「ありがとう、日和さん!!嬉しいです!!」
「ふふ、小太郎、貴方は素直ですね」
しかし、と言って日和は小太郎の目線に合わせて屈んだ。
「こんなものをつけていては、危ないですよ」
「え?」
肩を見ると、日和が示した場所に黒いもやのようなものが見えたが、日和が触れると、それは蒸発するように消えた。
「はい、これで大丈夫。よかったですね」
にこりと笑った日和に、小太郎もつられて笑った。
「ありがとうございます」
それから、白迅をきっと睨んだ。
「・・・何で教えてくれなかったんだよ」
「え?いや〜、僕は、そういうの見つけるのは苦手で・・・」
「お前!!苦手ばっかりじゃないか!!一体何が得意だっていうんだよ!」
「逃げること!」
「威張ることじゃないだろ!!」
またしても始まったかけあいに、日和が笑う。それに気付くと、白迅は一緒に笑い、小太郎は恥ずかしそうに俯いた。
「・・・ふふ、さて、私も本題です。これが必要でしょう、持ってお行きなさい」
「これは・・・」
日和が袖口から出したのは、お札。しかし、白迅が作ったものより細かな文様が刻まれていて、
しっかりとしたつくりのように見える。
「お〜、さっすが日和!!これこれ、僕、これが作りたかったんだけどね〜」
「全然違う・・・。白迅、本当に苦手だったのか、コレ」
自分が鞄に入れて携帯している札とはあまりに違うため、小太郎は思わず頭を抱えた。
「ははは!!大丈夫だよ小太郎!!日和のは効果抜群!!これからは安心して学校に通えるね!!」
「本当だな。何から何までありがとうございます、日和さん」
「いえ、これくらいのこと、礼を言われるまでもありませんよ。しかし、貴方があの・・・。・・・!」
何かを言いかけて、眉をしかめた日和に、小太郎が慌てる。
「ど、どうしたんですか日和さん!!」
「・・・白迅、長話をしすぎましたね。・・・交代の時間です」
「あちゃ〜、やっちゃったね。僕もつい、懐かしかったものだから油断したな。小太郎、ちょっとこっち来て」
空を見上げた白迅の目に映るのは、一番星。もう空は紺に染まりかけている。
白迅の隣に駆け寄った小太郎が心配そうな目で、うずくまった日和を見る。
「大丈夫だよ、日和は。交代の時はいつもこうだから。・・・大丈夫じゃないのは、僕たち・・・かも?」
白迅の困ったような笑みに、小太郎がますます心配になったのはいうまでもない。